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板倉君から新たなチャレンジが届いた
モーターサイクルナビゲーターをご愛読いただいている皆さま、こんにちは、編集長の山本です。
モーターサイクルナビゲーターの中で、「I LOVE BIKE」というシリーズの連載を担当してくれている北海道の大学生の板倉貴徳くん。
このシリーズの中では、彼が免許を取る前からの活動や、免許を取ってから爆発的に走ったロングツーリングの話を連載しています。
板倉くんは、気になっていたバイクが入荷したと聞けば、吹雪の中を歩いてバイク屋さんに行ったほどのバイク青年。
昨年はなんと、ツーリング中の網走で、あの北海道胆振東部地震に遭遇。
それでも彼は宗谷岬を回ってツーリングを続けたという、表彰モノの大学生ライダーなのです。
今回、Vol.10の入稿を楽しみに待っていた私の元に届いたのは、板倉君初の試乗レポート。
なんと、名刺をもって営業周りをして、いろんなところに試乗のお願いに行っているのだとか?
試乗レポーター若葉マークの板倉くん。
さてどんな内容になりますやら…。
試乗車に乗らせてもらえませんか?
こんにちは、いつも「I LOVE BIKE」を書いている板倉です。
2019年3月に僕がレポートを担当させていただいた「北海道モーターサイクルショー」。
この中では、いろいろなブースをお邪魔して名刺交換をたくさんさせていただきました。
その中に、CS OKUNOさんというディーラーの方がいらしたのですが、それ以来懇意にしていただいていています。
というのもこのCS OKUNOさん。
僕の家から約500mほどのところにあるご近所さんなのです。
CS OKUNOさんは道内唯一、アプリリアを傘下に収めるピアッジオグループ取扱店ということで、道内各地からお問い合わせが来ているというお店。
ちょっと試乗車の空き状況などをお聞きするために伺ったのですが、なんとその日のうちに、「乗っていいよ」ということで、早速試乗させていただくことに。
今回は前から気になっていた125㏄のあの車種に乗ることができましたよ。
125㏄のフルサイズオフロードバイクってすっごいですね。
今回乗せていただいたのは、イタリアメーカーApriliaのRX125。
昨年(2018年)発売のこのマシンに今更ながら注目した理由はただ一つ。
それは、日本にはもう公道を走れる125㏄オフロードバイクがラインナップから消滅したからに他なりません。
RX125は、全長;2115mm/全幅820mm/全高1170mm。
そのスケール感は125㏄であることを忘れて圧倒されそうになるほどの、本格的なフルサイズオフロードバイクです。
やはり林道が多い北海道に住んでいるからでしょうか、「これはかなり遊べそうなヤツだ」と、ワクワクしてきます。
Aprilia RX125の外観をチェック
さて、ここで改めてRX125の外観をチェックしていこうと思います。
シャープなフルサイズオフローダー
フロントマスクは手抜き間のないシャープさが魅力。
そのマスクに収まるのメーターは液晶フルデジタル。
国産125㏄オフロードモデルにはありがちなデザインでもありますが、情報の配列が良く、スピードメーターは文字が大きくて見やすいのが好印象です。
全体的に鋭く切れのあるデザイン。
特にタンクからシートにかけての直線的なラインが、いかにも本格的なエンデューロマシンといった感じですね。
テール周りの灯火類は全てLED。
なかなかきれいにまとめられています。
テーパーエンドのマフラーも全体に流れのあるデザインをキリリとまとめ上げていて、国産125㏄のそれとは違う上質な質感を目で愉しむことができます。
外観から予見されるRX125の「性格」
そんな美しいマフラーの手前、シート部分のちょっと不思議なデザインに目を奪われました。
シート下の空間は何?
シート後端はシートレールから浮いているようなデザインになっているのがわかります。
キーでシートを開けてみると、ちゃんとシートに沿ったスチール製のサブフレームが通っているこの部分。
実は、林道でのスタック時の救出用フックにもなる部分なのです。
やはりこれは、RX125の本気キャラを象徴する部分の一つだと言えるでしょう。
ABSはフロントのみ、これって一体?
RX125のブレーキにはABSが装備されているのですが、装備されているのはフロントのみの1チャンネル。
なんとリアには装備されていないんです。
オフロードバイクですから、やっぱりリアブレーキをかけてテールスライドさせてみたり、リアホイールをロックさせたい時がありますよね。
なので、オフを遊ぼうとするならこれでもいいと思います。
ただ、アフリカツインのように普段はABSを効かせておいて、
必要な時にキャンセルスイッチでABSを作動させないようにできた方が、安全性の面では嬉しいような?
でも、125㏄をエントリーモデルと考えるなら、やはり価格も大切になってきますから、コストとのバランスを考えるとこれが賢明ということなのかもしれませんね。
公道OKの山高ブロックタイヤが気になる
そんなブレーキや足回りを見ていて印象深いのは、公道車両としては過激なほど山の高いブロックタイヤを履いていること。
タイヤは、フロント90/90-21、リア120/80-18、というフルサイズオフローダーの王道サイズ。
ですが、これだけ山高なプロファイルのタイヤだと、ブレーキングやコーナリングで癖が出るのではないかと心配です。
でもこれは、「つべこべ言わずに、林道に連れてけよ!」
と言っているかのよう。
やはりこれも、RX125のキャラクターを象徴している部分なのでしょうね。
スプロケットが、なまらデカい
また、リアブレーキを観ながら「おや?」と思ったのは、
18インチのリヤタイヤにしても巨大と思えるドリブンスプロケット。
フロント13丁にリア69丁と言いますから、これはかなりの大きさです。
エンジンはアプリリアのRS4 125というレプリカモデルと同じもの。
数値的には最大出力は10,700rpmで15PS程度と決して大きくはないものです。
このスプロケットの形状からして、小さなパワーを目いっぱい使い、加速重視のバイクにしようという狙いがあるように思います。
シート高など、RX125の感触を確かめる
さて、外観はだいぶ観察してRX125の性格を予測することができたので、今度はこのスケール感を体感したいと思います。
シート高は驚異の905㎜!
RX125のシート高は何と905mm もあるんです。
ちなみに、僕のかつて愛車はHONDA・XR230。
これは805mmでしたから、なんと10cmも高いではないですか。
なので当然、身長160㎝の僕が跨るとこんな感じに…。
お尻をずらしてなんとかつま先が届く状態ですね。
先日このRX125を、身長180㎝くらいの日本の男性モデルさんが動画でレポートしているのを観ましたが、余裕で両足べったりつけて「ちゃうどいい」と言っていました。
(う、うらやましい…。)
なので、多分そのくらい長身の方にはお勧めです。
スタンドは自動跳ね上げ式
マシンを引き起こすと、自分の下で「カタンっ」という音がしてびっくり。
その音の方を見ると、なんとスタンドが勝手に跳ね上がっているではないですか。
RX125のサイドスタンドは、自動的にばねで跳ね上がるタイプなんですね。
お店の方に伺うと、「アプリリアにはありがち」とのこと。
確かに便利と言えば便利ですが、慣れないと不意に倒してしまいそうなので注意が必要です。
ちょっとびっくりしましたよ。
125㏄フルサイズオフローダー、いざ公道へ
エンジンをかけてみると、「プルルルルッ」という甲高い音が小排気量らしくあり、ちょっと可愛らしくも思えてきます。
乗り出したエンジンは、とにかくスムースに回ってくれるエンジンという印象。
ただ、XR230に乗っていたこともあってか、初速でのトルクの厚みはもっとあってもいい気がしますね。
しかし、125であることを考えれば、これも許せる範囲。
また、スプロケットの形状に見た通り、確かに高速域よりも低・中速域にパワーが集中している感じです。
昨年まで乗っていたXR230が空冷キャブ車だったのに対し、RX125は水冷インジェクション。
スロットルに対しての反応性が良く、レーンチェンジなどではその素直さに『これが本当に125㏄なのか?』と疑うほど。
ストレスなくふけ上がるスムースな加速感が僕には新鮮でした。
また、僕の体格では先述のように足つきに不安がありますが、走り出してしまえばポジションは楽。
φ41㎜のフロント倒立フォークは240㎜という十分なストローク量を持っているので、一般公道を走っても、路面からの突き上げをマイルドにしてくれています。
また、スチール製フレームも重さを感じることがなく、ライダーの入力に敏感に応えてくれる車体も、なかなかこれは上質なものだと思いますね。
そして、あのブロックタイヤ。
『北海道なのでいつか林道走行してみたい!』
少し乗っただけでそう思わせてくれるRX125。
2018年の日本発売時、輸入された初期ロッドがあっという間に完売したという話にはうなづけます。
125㏄はクルマを持っていれば、任意保険も車のファミリーバイク特約が使えるので維持費的に有利。
125㏄の手軽さを活かして、週末にオフロードを愉しむプレイバイクとして遊ぶのも良いかもしれませんね。
願わくば日本のメーカーさんにも、125㏄公道オフロードバイクを期待したいところ。
国内4メーカーの公道ラインナップの中にそれがない今、RX125はこのクラスフルサイズの本格オフロードバイクを望むライダーの夢をかなえる1台だと思います。
Aprilia RX125 諸元
エンジン | 4ストローク水冷単気筒 DOHC 4バルブ |
総排気量 | 124.2㏄ |
最高出力 | 11kW(15HP)/10,700rpm |
最大トルク | 11.3Nm/8,000rpm |
燃料供給方式 | 電子制御燃料噴射システム |
トランスミッション | 6速リターン |
フロントサスペンション | テレスコピック倒立フォーク |
リヤサスペンション | スチール製スイングアーム プログレッシブリンク式モノショック |
フロントブレーキ | 260㎜ウェーブディスク |
リヤブレーキ | 220㎜ウェーブディスク |
フロントタイヤ | 90/90-21 |
リヤタイヤ | 120/80-18 |
全長 | 2,115mm |
全幅 | 820mm |
シート高 | 905mm |
車両重量 | 134kg |
燃料タンク容量 | 6.2L |
車両本体価格 | \399,600 |
映像・諸元参照元;Aprilia RX125
まとめ
再び編集長の山本です。
CS OKUNOさん、突然のお願いにもかかわらず、取材協力ありがとうございました。
さて、板倉君の言う通り、125㏄のフルサイズオフロードバイクって今では珍しいものになりましたよね。
日本のバイクメーカーにもかつてはあった、125㏄フルサイズオフロードバイクのラインナップ。
オンロードバイクを持っている私としても、メインのバイクとは違った趣のバイクとしてオフロードバイクは魅力です。
「125㏄ならなんとか増車も?」と思いますし、それがこれだけ本格的なバイクだったらなおのこと嬉しいですね。
彼の記事を編集しながら、125㏄+オフロードというのはもっと見直されるべきフェーズなのではないかなと思いました。
さて、板倉君はいつも尋常ではない距離のロングツーリングを弾丸でこなしてしまう大学生ライダー。
これまでの長旅に一区切りつけて、また新たな旅を画策しているようですよ。
かつての愛車レイ(XR230)との旅も次回で最後?
板倉君の「I LOVE BIKE」シリーズにもご期待ください。
取材協力;CS OKUNO