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「W」の新時代、いよいよ始まる
排ガス規制強化のため、2017年モデルをもってに惜しまれつつその生産を終了していたKawasaki W800。
Kawasaki W800は、1966年に登場した「W1」の流れを汲むトラディショナルなスタイルを持ち、バーチカルツインエンジンの独特な乗り味とサウンドは今もなお、多くのライダーを魅了し続けています。
それだけに、昨年11月のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)でW800 STREETとW800CAFEが発表されたことはKawasakiファンならずとも嬉しいニュースだったことでしょう。
そしてついにKawasakiはそのW800 STREETとW800CAFEの国内仕様を、2019年3月1日から日本国内で発売すると発表しました。
新型では「Wらしさ」を継承しながらも、全身にわたる改良が施されたニューモデルとして登場します。
では早速、Kawasakiから正式に発表された内容をもとに、その姿をじっくりと見ていくことにしましょう。
先代からどう変わったの?
一見すると先代モデルからはカラーリングがちょっと変わっただけに見えてしまうかもしれません。
↑2017年 W800 FINALエディション
しかし、じっくり見ていくと大きく変わっていることがわかってきます。
W800STREET 国内仕様の「顔」とふっくらしたプロポーション
こちらがW800 STREET。
カラー名は「メタリックフラットスパークブラック×メタリックマットグラファイトグレー」です。
引き締まった艶消しのシルバーと静かに光を返すタンクのコントラストが非常に渋いですね。
また曲線で構成されたシュルエットには豊かな美しさを感じます。
外見的に分かりやすい変更点はライト周り。
ヘッドライトはZ900RS同様のLEDを採用。
この写真で「あれ?」と思った方もいるかもしれませんね。
実は上にあげた、外観写真は海外仕様の写真なので、ご覧のようにちょっと大きめなウィンカーを持つのが国内仕様の「顔」となります。
同様にリアにも大き目なウインカーがつくので、国内モデルのテールビューはこの雰囲気です。
また、全体に丸みのあるフォルムを創り出しているタンクの形状が、「先代よりちょっとふっくらしたかな?」と思っている人がいたら、それは正解。
タンクは従来の14Lから15Lに容量を増やし、外見的なボリュームも増量し、ツーリング性能をより充実させています。
ビターでスポーティーな印象のW800 CAFE
先代モデルには、ビキニカウルとシングル風なシートを取り付ける外装オプション、「CAFE STYLE」が用意されていました。
新型ではベースモデルのSTREETとは一味違った雰囲気を放つ完成車として、W800CAFEが発売されます。
こちらがそのW800CAFEです。
ビキニカウルや専用シートだけでなく、ローポジションのコンドルハンドルを備え、
タンクにはタンクパッドが装備されるのがCAFEの特長です。
カラー名は、「メタリックマグネシウムグレー×ギャラクシーシルバー」。
ビターでスポーティーなビンテージ感が印象的です。
諸元も異なる2台の個性
文末で、諸元上の数値的な比較を載せていますが、それも踏まえて視認できる部分について、この2台の差をご紹介しておきましょう。
CAFEのコンハンドルはSTREETよりも100mmハンドル幅が狭く、その位置もかなり低くなっています。
また、シートもかなり趣の異なる雰囲気に。
↑STREET
↑CAFE
ご覧のようにCAFEではシングルシート風のデザインでレーシーになっていて、座面の在り方も違いますね。
数値的にSTREETのシート高が770mmであるのに対し、CAFEは790mmと高くなっています。
エンジンなど動力系の数値には差はありませんが、このポジションの違いから、STREETとCAFEでは乗り味がかなり違って感じられるのではないかと思います。
また、STREETとCAFEではメーターも区別されていて、
↑STREET
↑CAFE
STREETではブラックの文字盤がシックなイメージを、またCAFEではホワイトのスポーツライクなデザインになっています。
共通の装備として、ETC2.0を標準装備なのはありがたいところ。
さらにW800 CAFEには、グリップヒーターが標準で装備されています。
そのほか、この2台に与えられた2つの個性をさらに豊かにしてくれるアクセサリーとして、
グラブバーや
リアキャリア、
そしてエンジンハンガーなど、ドレスアップパーツも充実しています。
それぞれの雰囲気に合わせたファンションで出かければ、自分時間を演出したかなり楽しいライディングになるかもしれませんね。
本文の最後に、Kawasakiの公式ページ上にあるW800 STREET・W800 CAFEそれぞれの「アクセサリーコンフィギュレーター」へのジャンプリンクを用意しました。
バーチャルにアクセサリーの着せ替えができ、同時に装着時の価格見積もりもできますので、豊富なアクセサリーの選定に是非お試しください。
足回りの変更で走行性能に期待
2017年モデルではフロント19インチリア18インチだったのに対し、新型は前後18インチへ変更。
↓
さらにキャスター/トレールも27°/ 108mm→26.0°/ 94mmと1°立てられた形になっているので、Uターン等のクイックな操作がしやすくなっているのではないかと思います。
さらにはブレーキ性能も大幅に向上。
ABSも加わり、リアには歴代初のディスクが採用されています。
↓
この車体構成の変化からは、操安性の良さに軽快性がプラスされた印象を受けますね。
なので、ポジションの違いを考えれば、恐らく2台は単にその外観だけではなく、
- STREETでは市街地で操縦性の良さを気軽に楽しむことができるかたちに。
- やや前傾ポジションで乗るCAFEでは、スポーティーな乗り味をしっかりと感じとることができるように。
味わいの違う2つ個性が、それぞれに与えられているのではないか思います。
変化を感じさせなずに「魅せる」進化
さらに目に見えない細部にも改良がくわえられ、知るにつけその随所に乗り味とルックスの美しさへのこだわりを感じることができます。
フレームを完全にリニューアル
フレームも従来のダブルクレードルフレームを継承しているわけですが、内容的には完全にリニューアルされたフレームになりました。
写真のように角断面のバックボーンと丸パイプのダウンチューブで構成されるクレームは、各部の必要剛性を新たに解析し、パイプの外径を変えることなく各部の肉厚を調整。
さらには、溶接のモリモリ感を最小限に抑え、高品質な外見にこだわったフレームとなっています。
エンジンはEURO4をクリアしながら操作性をUP
『美しいエンジンをつくる』をコンセプトに開発が進められたエンジン。
空冷773㏄のバーチカルツインエンジンはロングストロークの360°クランクを持ち、あの独特な鼓動感は新型においても健在の様です。
エンジンの外見は、あえて変化が感じられないように工夫されていますが、内部構造には大幅に手が加えられています。
数値的には、62N・mの最大トルクは変わらないものの、その発生回転数を2,500rpmから4,800rpmに引き上げ、フライホイールを重くすることで低中回転域のトルク感の力強さを演出。
また、最高出力は48psから52psへ4ps増強されていることから、新型のエンジンでは、押しの強く伸びやかな加速感を楽しむことができるのではないかと思います。
さらに、クラッチにはアシスト&スリッパークラッチを採用。
クラッチ操作を軽くし、急激なエンジンブレーキの際にもリアタイヤのホッピングを防ぐなど、使い勝手と安全性の両面に磨きがかけられたな内容に進化。
また、環境適応についてはO2センサーを追加して燃料の噴射を細密にコントロールし、触媒を改良することで厳しいEURO4の排出ガス規制に対応しています。
バーチカルツインのサウンドが新時代に響く
ちなみに、「バーチカルツインって何?」という人のためにお話しすると、それは「バーチカル」というのは「直立した」という形態を表す言葉。
それ自体は今でいう「パラレルツイン」と大差ないわけですが、
独特の外観を持つべべルギア駆動のカムシャフトと、360°クランクエンジンが、単にシリンダーが2本並んでいるだけでは得られない個性的なサウンドを奏でます。
筆者は初期のW800に試乗した経験がありますが、エンジンをかけると「るるるっ」と歌い始め、回転を上げていくと「わわわぁぁ」という力強いコーラスになっていく。
これにはかなり、うっとりとした気分になったのを覚えています。
もちろん、新型の音はまだ聞くことができませんが、恐らく新型W800のサウンドは、往年のライダーにとって懐かしい響きであることはもちろん、若い世代にとって耳新しい響きになるかもしれません。
現代の新車では国産唯一となったこのエンジン形式。
それだけに、「バーチカルツイン」は単なるパラレルとは区別され、もはや「W」のアイデンティティーとして次世代に受け継がれていくわけですね。
先代モデルと諸元を比較
先代モデルと数値を比較した場合に見えてくる進化の方向性とはどんなことなのか?
そのあたりは先代を含め3台の諸元の違いを見ればいろいろと想像も深まっていきますね。
2016年W800 FinalEdition |
W800 STREET |
W800 CAFE |
||
形式 | EBL-EJ800A | 2BL- EJ800B |
2BL- EJ800B |
|
全長× 全幅× 全高 (mm |
2,180× 790× 1,075 |
2,135× 925× 1,120 |
2,135× 825× 1,135 |
|
車両 重量 |
216kg | 221kg | 223kg | |
軸間距離 | 1,465mm | 1,465mm 1,465mm |
||
最低地上高 | 125mm | 130mm 130mm |
||
シート高(mm) | 790 | 770 | 790 | |
ハンドル角 (左/右) |
37°/ 37° | 37°/ 37° | ||
最小回転半径 | 2.7m | 2.7m | 2.7m | |
キャスター /トレール |
27°/ 108mm | 26.0°/ 94mm |
26.0°/ 94mm | |
ホイールトラベル | 前 | 130mm | 130mm | 130mm |
後 | 106mm | 107mm | 107mm | |
タイヤサイズ | 前 | 100/90 -19M/ C 57H |
100/90-18M/C (56H) | |
後 | 130/80 -18M/ C 66H |
130/80-18M/C (66H) | ||
ホイールサイズ | 前 | 19×2.15 | 18M/C×MT2.50 | |
後 | 18M/C× MT2.75 |
18M/C×MT3.00 | ||
ブレーキ形式 | 前 | シングルディスク 300mm(外径) |
シングルディスク 320mm (外径) | |
後 | ドラム160mm(内径) | シングルディスク 270mm (外径) | ||
エンジン種類/ 弁方式 |
空冷4ストローク並列2気筒 / SOHC4バルブ |
空冷4ストローク並列2気筒/SOHC4バルブ | ||
総排気量 | 773cm³ | 773cm³ | ||
内径×行程/圧縮比 | 77.0mm×83.0mm / 8.4:1 |
77.0mm×83.0mm/ 8.4:1 |
||
最高出力 | 48PS/6,500rpm | 52PS/6,500rpm | ||
最大トルク | 62N・m (6.3kgf・m) /2,500rpm |
62N・m (6.3kgf・m) /4,800rpm |
||
燃料消費率(km/L)(60km/h・国土交通省届出値) | 33km/L | 30.0km/L | ||
燃料タンク容量 | 14 L | 15L | ||
メーカー希望小売価格 |
925,560円
|
993,600円 〔税込〕 |
1,112,400円〔税込〕 |
☆ 文中でお伝えしましたKawasakiアクセサリーコンフィギュレーターのリンクは、下記のリンクをクリックしてください。
映像参照元;カワサキモータースジャパン