みなさんこんにちは!阿部真由美です。
次は何を書こうかな、楽しいことを書きたいな、とあれこれ考えていたのですが…今回は。
一度どうしてもお伝えしたいこと。
これから免許を取って公道に出る方、既に免許をお持ちの方…ライダーさんドライバーさんみなさんに少しだけでもわかって欲しいこと、それについて書かせていただきます。
今回は真剣です。珍しく。
私の仕事は、教習指導員です。いわゆる、自動車学校の先生です。
二輪車も四輪車も、殺傷能力の高い乗り物であり危険度の高い乗り物です。
それをいかに安全に扱うか、いかに事故なくその力を使い切るかを教えているつもりです。
ですが残念ながら、私たちが取得のお手伝いをした免許によって毎日たくさんの事故が起こっているのも現実です。
私のやっていることは本当に正しいのか、誰かの悲しみを生むことに繋がっているのではないか、と迷うこともあります。
自動車の中でも二輪車は特に危険な乗り物だと言われています。
転倒したり事故を起こした際の、運転者にかかるダメージやリスクの大きさが四輪車とは桁違いだというのが主たる理由です。
確かに、その通りです。
四輪車であれば助かるであろうケースの事故でも、二輪車では命を落としてしまうこともあります。それは事実であり、否定することはできません。
だからこそ、「家族をバイクには乗せたくない」とおっしゃる方やそのご家族には私はバイクは絶対に勧めません。
二輪車は楽しいだけではなく、危険度も相応に高い乗り物だと知っているからです。
そして、大切な人を失いたくないという思いも痛いほどわかるからです。
私には、家族や友人を交通事故で亡くした経験はありません。ですが、大切な友人を亡くしたことはあります。
大学時代の友人だったその彼は、ある冬の日。自殺しました。
とても寒い日で、六日町がものすごい吹雪だった日の夜。彼の死を伝えてきた友人の電話。今でも、覚えています。
私は、何も言葉を返せませんでした。
一緒に歩いた桜並木の道。馬鹿みたいに騒いで笑い合った日々。
綺麗に整った顔立ちに、少し長い髪とメガネが似合う、いつも訳のわからない冗談を言ってよく笑う彼でした。
卒業しても、離れていても。
望みさえすれば、またいつでもあの笑顔に会えるんだと信じて疑いませんでした。
でも、もう二度と彼に会うことはできなくなってしまいました。
彼の死を認めたくなくて、生きていると思いたくて…お墓参りを避けました。
元々遠隔地に住んでいたので、墓前に行きさえしなければ私の日常は彼が生きていた頃と同じでした。
でも、数年後。勇気を出して、彼のお墓に行きました。
泣かないで、笑って会いに行くつもりでした。そのための心の準備はもうできたと思っていました。
…でも、結局ダメでした。
色んな思いが交錯して、彼の墓前に立った瞬間何もできずに泣き崩れました。
馬鹿みたいに声を上げて泣きました。みっともないと思いましたが、止められませんでした。
もうこの世界のどこにも彼はいないんだ、と認めざるを得なくなった瞬間でした。
もうすぐ、彼の11回目の命日が来ます。
この時期になるといつも彼のことを思い出します。
どこかで、生きているんじゃないか。
ひさしぶり!って笑う顔に会えるんじゃないかって、頭の片隅で少しだけ思う自分がいます。
…ありえないことだとわかっているのに。
失われた大切な存在を思う時、いつまでも痛む心を抱えるのは…それが事故によるものであれ自殺によるものであれ、同じだと思います。
何年経っても、その痛みは消えることはありません。
大切に思えば思うだけ、その思いの強さに比例して悲しみは必ず大きくなります。
そしてその悲しみは、連鎖してより多くの痛みを生みながら広がっていきます。
誰かが傷を負うとき、それによって苦しむのは当事者だけではすまないのが現実です。
交通事故は、運転者のたった1秒の不注意で起こると言われています。
だからこそ、気が緩んでしまいそうになる時…どうか、思い出してください。
あなた自身も、他の誰かにとっての「たいせつ」なんだということ。平凡でも幸せな日常を形作る大事なピースのひとつであり、万が一にでも欠けてしまえばその代わりはどこにもないのだということを。
交通事故を起こして、もしもあなたが亡くなってしまったとしたら…
あなたにとって一番大切で誰より守りたいと願う相手に、強い悲しみと苦しみをあなた自身が負わせることになります。
そしてその傷は決して消えることはないんです。
二輪車は危ない、とたくさんの方が言います。
ですが事故を起こすのはマシンそのものではなく、それを操作する人間の心です。
「自分1人の心がけでは防げない事故がたくさんある」という声もあります。確かにそうです。
ですが、心ひとつで防げる事故だってたくさんあるはずです。
そのことを、どうか忘れないでください。
…それでも。
事故リスクを知っていても、どうしても、私はバイクが好きです。
何より楽しくて、乗っていたら嬉しくて、世界の見え方が変わるのがバイクです。
私はバイクに出会って、人生が変わりました。
行動範囲が広がって、多くの新しい景色に出会って、たくさんの縁が繋がれていって…いろんなことが怖くて逃げてばかりいた自分が変わっていきました。
見た目も中身も嫌いで嫌いで、居場所も価値も何もないと思っていた自分のことも…少しずつですが、受け入れられるようになりました。
何もなかった私に、変化を与えて世界を変えてくれたのが、バイクでした。
だから私は、たくさんの人にバイクの良さを知って欲しいと願っています。
バイクはオモチャではありません。
扱いを間違えれば、凶器となって自分や周りに深い傷を負わせます。
だからこそ、楽しさだけでなくそこに付随する危険性とリスクの高さをきちんと理解した上で、事故を起こさない運転技術とマインドを身につけて乗って欲しい。
そういうライダーをたくさん育てていける指導員でありたいと願っています。
…いつもよりだいぶ重くなりました。矛盾もあるかもしれません。
でも、少しでもいいから伝わって欲しいと思います。
教習指導員、技能検定員として。事故を減じられるように、と祈りながら日々の業務に当たる人間として…
みなさんに、少しでも届けられていますように、と。
そんなことをいつも考えています。