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バイク離れってホントなの?
もうずいぶん前からか「若者のバイク離れ」と言われますよね。
でも、筆者はどうもそのフレーズに納得がいかないんです。
3年前まで筆者が務めていたレンタカーの営業所には、アルバイトの学生さんたちが何人もいたのですが、たいていこの子たちがバイクバカ。
方々の営業所に行くと、やっぱりそこにも地域の大学に通うバイク好きの学生さんが多数在籍しているものです。
なので、車を回送に行った時などに会うと、ついつい話し込んでしまうんですよね。
みんな安いバイクをどっかから手に入れては、これをいじりながら仲間とワイワイガヤガヤやっている。
そこには、約30年近く前の自分たちと同じ光景が広がっているんですよ。
若いバイクバカたちの輪に入って、今のバイクの話をするのは何とも楽しいものですね。
確かに仕事がら、右肩下がりのバイク人口統計は、もう何年も飽きが来るほど見てきました。
しかし、その数字の中でこうしてバイクに乗っている彼らの姿はどれだけ世の中に認識されているのでしょうか。
今回は、警察主催の安全講習会に参加する、学生さんたちの熱い熱いバイク熱をお伝えしようと思います。
東京・多摩の5大学が腕を磨き競う
2018年12月1日、東京・多摩市において、「第10回警視庁南大沢警察署管内大学生二輪車安全運転講習会」が開催されました。
筆者の住む東京の多摩エリアは、実に数多くの大学が所在する都内有数の文教地域。
この日集まったのは、
- 中央大学
- 法政大学
- 首都大学東京
- 多摩美術大学
- 日本文化大学
の5大学のバイクサークル、総勢38名の学生さんたちです。
会場となったは2輪・4輪分離型の教習所。
2輪専用コースは都内最大級を誇る同市・唐木田の東急自動車学校です。
↑写真引用元;東急自動車学校HPより
晴天に恵まれたこの日、
広々としたコースには、さながら白バイの傾斜走行訓練の様なテクニカルなコースが用意されていました。
若いライダーを応援したい
この催しは南大沢署・南大沢交通安全協会主催。
管内の大学生の安全意識・技術の向上を目的とするもので、このなかでは大学対抗の競技会も行われます。
競技に先立って行われた開会式で、南大沢警察署の大嶺 忍 署長は管内の若者の事故が近年増加傾向にあることに触れ、
「若い人皆さんがこれからも安全に永く楽しいバイクライフを送るためにこの講習会の経験を役立ててほしい。」
と、ご挨拶。
さらに会場提供で後援されている東急自動車学校の田代芳広所長も、
「若い方々が安全に興味を持って参加してくれていることをうれしく思います。この広いコースを走りながら、存分に安全技術を身につけていってほしい」
と、それぞれに学生さんたちへ、安全を願う強い気持ちを伝えながら激励しておられました。
先述のように、全国的に見ても多摩エリアは学生さんの密度が濃い地域。
管内で日ごろ事故に接している警察署、そして安全教育のノウハウを持つ教習所。
地域ぐるみで彼らがタッグを組んみ、こういう場を作ってくれることは、先の世代のライダーを安全に導くうえで大変意義深いことだと思います。
白バイの先導で講習スタート
まずは応用バランス(千鳥走行・一本橋・パイロンスネーク)などの実技講習を受け、学生さんたちは白バイの先導でガンガン走っていきます。
会場の雰囲気もわかりやすいと思うので、中央大学のエースチームの出発シーンを動画でご覧いただきましょう。
「行くぞー!」
「オーっ!」
気合十分に、コースイン。
コースも結構難しそうですが、みんな臆することなくコーナーに飛び込んでいき、白バイ先導のメリハリある動きに追従。
先輩たちから脈々と受け継がれる練習方の成果を発揮しながら、各セクションをリズムよくを駆け抜けていきました。
これはもう、3ない教育真っ只中でバイク利用を基本的に認めない大学に通っていた筆者としては、実にうらやましい光景。
若い時期に、たくさんの仲間とこういうことに一生懸命打ち込める青春があるなら、もう一度やり直したいものです。(泣)
行け行け一本橋!
メインイベントは「大学対抗戦一本橋」。
これは、各チーム3名で一本橋の合計タイムを競い、上位3チームと個人の表彰を狙って争うものです。
一本橋の先では「タグ・ホイヤー」のお高い計測器がしっかりとみんなのタイムを計っています。
なんだかどこかで見たようなこの光景、筆者なら別の意味で緊張して落ちそうです。(笑)
とはいえここは大学の名を背負った競技。
仲間に囃されながら、緊張のコースインです。
「行けー、がんばれー、落ちんなよぉ!」
「うおっしゃぁ、任せろっ!」
「よしっ!行け行け、粘れぇ~!」
「おっ?あ、あ”~ヤベーぇ~!」
「おぉー、セーフセーフ!なんとか行ったぁ!!」(爆笑)
各大学とも、うまくいっても行かなくても、やんやの喝采。
それなりの緊張感は保ちつつも、和気あいあいと周りの大人たちも笑顔に巻き込んで、ワイワイ楽しくやっている感じがすごくいいですね。
競技の結果団体の部では、4チーム態勢で出場の中央大学二輪愛好会が1~3位を独占。
個人では、3位が多摩美術大学の八木選手。
2位が中央大学二輪愛好会の伊藤選手。
そして栄えある個人優勝は中央大学二輪愛好会の大滝選手でした。
ちなみに、中央大学二輪愛好会は毎年この大会で連勝を決めている強豪チーム。
これからも頑張ってほしいですね。
笑顔の交流で安全をサポート
今回、学生さんたちの先導や技術指導を務められたのは、
警視庁第九方面交通機動隊から6名の白バイ隊員の方々と、南大沢交通安全協会の二輪車安全運転指導員方々。
競技後に行われた交通安全講話では隊員の方から、
運転中のリラックスの方法や視線の置き方などのバイクの乗車姿勢、そして前後ブレーキのタイミングなど、安全条件を整えるための細かな点についてアドバイスをされていました。
さらにこの後、今年度、警視庁の白バイ安全運転競技大会で2位の岡崎隊員と、新春の駅伝大会復路10区を先導される吉岡隊員が白バイによるドリル走行を披露。
アクセルタイミングにずれのない、息の合った鮮やかなドリル走行が、学生さんたちを魅了していました。
素晴らしいいドリル走行の後には、みんなが白バイを囲んで覗き込み、矢継ぎ早に質問を浴びせます。
「これ、スピードってどうやって止めて〔計測してる〕んっすか?」
「速度はここで…、それからここにプリンターがついてるんだよ。
君たちの大学前の街道にいるよ、夜もいるからお世話にならないようにしてね。」
「カウルにのココに傷がついちゃってますね。」
「あ、この車両はね、競技に参加するための競技車で、サイドバンパーなんかも溶接してお手製だったりするんだ。
街で走っているのは警ら車といって、リアに長いパトライトがついてたり、いろいろ違うんだよ。」
「マジすか、すっげー」
普段お会いするときはあまりうれしくない場面が多い白バイ隊員の皆さんですが、今日は何の後ろ目たさもなく笑顔で交流。
相手を知って和んでみると、あえてお世話になる様な運転はしたくなくなる?
少なくとも、白バイの皆さんの百戦錬磨のスゴ技を見たことで、学生さんたちのモチベーションはさらに向上したようです。
その後はさらに、南大沢交通安全協会の二輪車安全運転指導員の方々からも、管内の事故実態を踏まえた交通安全講和を受けました。
「…という状況で、先週○曜日に、みんなの良く通る△△通りでバイクの事故があって、残念なことに運転中の方が亡くなっています。」
協会の方のお話は重く真剣。
身近に事故があるということを意識してもらい、ブレーキタイミングの在り方や予測運転の必要性など、具体例を示されながら安全の上で意識すべき点についてお話しされていました。
「バイクリア充」はちゃんといる
最後には南大沢署のキャラクター「ゆず郎くん」も加わっての記念撮影。
大学対抗競技もありましたが、既にここには敵も味方もありません。
確実に存在するのは、バイクでリアルな青春を楽しんでいる「バイクリア充」ともいうべき若者達の姿。
彼らを見ていると、「若者のバイク離れ」という言葉も空に溶けていきます。
いつの間にか世の人々は、ネガティブさを普遍として捉え、今そこにあるポジティブな事柄に過小評価しながら、あえてその可能性をつぶしているのではないでしょうか。
皆さんも是非、機会があったら大学など、若い人たちの集まる場所の駐輪所を覗いて見てください。
数は少ないかもしれないけれど、そこには必ずいるはずです。
バイクでワイワイガヤガヤやっている懐かしい連中が。
そして見かけたら微笑んで、スティーブジョブスが若者たちに語った言葉を心の中でつぶやきましょう。
”Stay hungry, stay foolish”(ステイハングリー・ステイフーリッシュ)
「どうかどこまでも末永く、バイクバカでいてくれ」と。
それはバイクへの恩返し
今年、最後に残っていた埼玉県の方針転換が発表され、長きにわたって行われてきた教育委員会主導の「3ない運動」が全廃されました。
遠ざけて取り上げる時代は遠く過ぎ去り、バイクを志す若者への安全教育の体制を整える自治体も徐々に増えています。
今回のようにバイクに熱い若者たちがいれば、それを本気でサポートする地域の大人達の姿は欠かせないのです。
筆者もこれまで、この点には力を入れて来ました。
それはバイクに育てられた人間として、
『この先も若い世代がバイクを楽しみ、さらに先の世代にその楽しみを残していってほしい。』
そんな願いと、バイクに対するせめての恩返しのつもりで書いています。
今回は東京・多摩地区で開かれた大学生を対象とした安全講習会を取材したもの。
ですが、こうした講習会は年間を通じ、全国で行われています。
「そろそろご子息がバイクに」
読者の方の中には、そういう親世代の方も多いことだと思います。
柏秀樹先生の「KRSライディングスクール」や、一般社団法人 二輪車安全普及協会主催の「グッドライダーミーティング」
「若い人が免許を」
と言ったらその時、親子で参加してみてはいかがでしょうか。
或いは筆者が経験したように、職場の学生アルバイトさんなどで若いライダーが周りに多い場合には、是非お声かけしていただきたいですね。
「安全はクリエイティブに楽しみながら身につけるもの」
この点をぜひ、若い世代に伝えていきましょう!
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取材協力;警視庁南大沢警察署
東急自動車学校
中央大学二輪愛好会