BMW '19年型R1250GS/RTがリードする可変バルタイとスマートメーター
Googleイチオシ記事




GSとRTが新型へ

2018年9月17日、BMWモトラッドは2019年型R1250GSとR1250RTの2台を正式に発表しました。


2019年型R1250GS


BMW Motorrad Spezialホイールオプション装着例


2019年型R1250RT

外観は従来型をほぼ踏襲した形となりますが、GSでは登坂路でのスタートを助ける「ヒルスタートコントロールが付き、RTでは電子制御サス新世代ダイナミックESA]などが装備されています。

(*GSではダイナミックESAはオプション)
(*いずれも欧州仕様についての情報を参考にしていますので、日本仕様では装備の
標準・非標準が異なる可能性もあります。)

新型ではエンジンを大幅にアップデート。

さらに最大の特長となるのは、吸気側にBMW Shift Camと呼ばれる可変バルブタイミング・リフト機構を装備していることです。

実は、昨年夏からモーターサイクルナビゲーターでは、BMWがボクサーエンジンに可変バルブを搭載してくるらしいという話題をお伝えしてきました。

それが今年ついに現実のものとなって表れたわけですね。

今回は新しくBMW R1250GS/RTに採用された、バルブタイミング・リフト機構の内容をご紹介しながら、今後のバイクの傾向について考えていきます。

BMW Shift Camとは

BMWモトラッド本国のサイトでは、この新型バルブタイミング・リフトの仕組みをCG動画にしてアップしています。

早速見てみることにしましょう。

*音量に注意

動画引用元;BMWモトラッド

お分かりになりましたでしょうか。

少しずつ解説していきますね。

まず、この画面の青い部分が吸気側のカムシャフトで、同軸上に中低速域用・高速域用のカム山を一組ずつ持っています。

この青く示したのが低中回転用のカム。

そしてこの赤く示したのがその左側に位置する高回転用のカムです。

これを切り替えているのが、

吸気側カムシャフト右側にある「Shift Gate(シフトゲート)」と呼ばれるこの部分。

エンジンの回転数が上がってくると、アクチュエーターによってピンがせり上がり、このピンがシャフトを右にスライドさせ、カムを高速側に切り替えます。

また、反対に高回転から回転数を落としていくと、

今度はアクチュエーターが右側のピンをせり上がらせ、低中回転用カムに交代させる仕組みです。

これによって、

アクセルの開け始めはバルブのリフト量が小さく、


ヘッド内画像引用元;BMWモトラッド

アクセルを開けていくと、バルブのリフト量が上げて吸気をより多く取り込むようになっているわけです。

一般的なエンジンでは、低速域での扱いやすさを求めると、高速域での伸びやパワーが犠牲になり、高速域のパワーを求めれば低速域が犠牲になるというジレンマがあります。

なので、こうしたバルブタイミング・リフト機構を持つことによって、高回転でのパワーと低中速での扱いやすさを両立させたエンジンキャラクターが実現するわけですね。

BMW Shift Camが求めたもの

今回BMWとしては初の可変バルブタイミング・リフト機構。

他メーカーのバイクを見てみると、これは一つのトレンドという見方もできそうです。

例えばスズキのGSX-R1000R。

これは、スズキレーシングバリアブルバルブタイミング (SR-VVT)と呼ばれる可変バルブタイミング・リフト機構。

ご覧のように12個のスチールボールを遠心力でスナップさせることで、吸気側バルブのタイミングに緩急をつける仕組みです。

GSX-Rが評価されているのは、この機構のおかげで高速域ではSSらしくダイナミックに、そして低速域を使ってストレスなく街乗りを楽しめる懐の広さです。

乗りやすさを犠牲にした、ただ速いだけのバイク。

そんなものが持てはやされたのも、ずいぶん遠い昔話になりました。

今は環境規制も厳しくなり、(少なくともメーカーが)マフラーの口径を遠慮なくデカくしてパワーを上げるようなことはできません。

そのうえ、乗り手の感覚に沿う乗りやすさは速さを求めるにしても重要。

現代のエンジンは環境性能を上げながら、それを限りなく求める方向にあります。

また「乗りやすさ」というのも、扱える人にしか扱えないマニアックなものではなく、様々なスキルのライダーにとって受け入れやすいものでなければなりません。

街乗りからツーリング、そしてサーキットに至るまで、幅広いフィールドで快適なライディングを楽しめる。

そんな風に、すべての領域でのパワー感や使いやすさを求めていくと、可変バルブタイミング・リフト機構に行きつくということなのかもしれません。

多分これで終わらない予感

例えば新型ZX-10Rシリーズの場合は、可変ではありませんがバルブのリフト機構を刷新したことで、操縦性とパワーを上げてきています。

BMWも、今回手に入れた可変バルブタイミング・リフト機構をS1000Rに応用するため、すでにテストが始まっているという見方もありますね。

もし、今回のBMW Shift Camがた車種に応用され、ある種の起爆剤になるのであれば、コンパクトな可変バルブタイミング・リフト機構の開発は世界的に加速するのだと思います。

例えば、DUCATIにはすでにテスタストレッサという独自の可変バルブ機構がありますね。


テスタストレッサはこの可変カムで軸をずらす方法。

MultistradaのL2エンジンに採用されており、実績がある機構ですから新たなのV4への採用など、その進展も気になります。

また、ホンダではV-TECが有名ですね。

参照元;ホンダ技研工業VFR800

こちら乗用車用とは異なり、低回転では2バルブ、高回転では4バルブに切り替わるシステムです。

低回転での扱いやすさ、そして4バルブに切り替わった瞬間の爽快感は多くのファンを魅了しています。

現行CBR1000RRのSPとSP2とではバルブのはさみ角が違ったり…。

ホンダR&Dさんもバルブに目が行っている様子なので、次期CBR1000RRもあるとすればこの方向でしょうか?

またヤマハの場合も、

小排気量車には既にVVAという可変バルブタイミング・リフト機構を備えたモデルを持っています。

写真参照元;ヤマハ発動機インドネシア

このYZF-R15も、小さいながら高速域のバルブ設定に切り替わった時の面白さといったらありませんでした。

次期R1最大のギミックとして発展してほしいと思いますね。

可変バルブタイミング・リフト機構には重量が増すという欠点もあるわけですが、スズキや今回のBMWでもかなりコンパクトな機構を造り上げてきています。

「使えて速い」を求められるのが現代のバイク

BMW ShiftCamの登場が可変バルブタイミング・リフト機構の発展に拍車をかけ、世界のバイクのヘッド内に新たな潮流を創っていくのかもしれません。

もう一つの新しい潮流

今回はBMW Shift Camを今後のバイクの潮流と見て話を進めていますが、新型R1250シリーズでは、もう一つ注目していただきたい点があります。

〔感覚的なインターフェイス〕

それは、標準装備のコネクティビティーと呼ばれるマルチファンクションメーター。

(*欧州仕様についての情報を参考にしていますので、日本仕様では標準装備とならない可能性もあります。)

これは、単にスピードやエンジン、車体の情報などを表示するだけではありません。

2輪にITS搭載

「動画重いぞ」という方のために、こちらも解説させていただくと、

まずこちらは通常走行モードの表示。

タコメーターは示している数字が大きく表示されるのが、見やすくていいですね。

また、スピード表示とギアポジション表示に間に見えるのはその道路の速度制限。

これはITS(高度安全運転支援システム)と呼ばれるものです。

最近車を買った人やそういったお友達がいる人なら、ご覧になったことがあるかもしれませんね。

自動車業界と各国の運輸当局では、来る自動運転時代に備えて、運転者に道路状況を知らせるための街路アンテナの設置を推進中。

ITSはその礎となるもので、現段階ではその道路の標識などを表示する形で機能しています。

BMWでは既に完全自律早走行可能なGSも研究中ですが、この表示は二輪車に対するITS実用の第一歩。

この表示の意義は大きいのです。

メモリー機能も充実のGPS

この他にも、コネクティビティーは非常に多彩な機能を持っています。

このマルチファンクションメーターにはGPS機能が備わっていて、

このように矢印のみですが、車線の情報なども表示される他、ツアーメモリーで経路を記録するなど、多彩な機能を持っています。

スマホとの連動で快適性UP!

そして、このメーターがコネクティビティーと呼ばれる所以は、スマートフォンとの連動の良さ。

スマホに専用アプリをインストールすると、

ハンドルスイッチでスマホ内の連絡先一覧の中から電話をかけたい相手を選ぶことができ、

インカムを使って通話をすることができます。

また、音楽データーにもアクセスできるので、

当然音楽を聴くこともでき、さらには再生中のアルバムのジャケットまで表示してくれるんです。

車ではすでによくあることですが、バイクではなかった装備ですね。

更に、「MyVihicle」の中では、

タイヤの空気圧などの情報も表示できるので、メンテナンスに便利。

これはサーキット走行をするSSにもほしい装備ですね。
メーター画像引用元;BMWモトラッドインターナショナル

BMWから始まる潮流

最近は電脳バイクが増えて、メーターパネルにTFT液晶を採用している車種も珍しいものではなくなりました。

ただ、これらをいざ操作してみると、ファンクションボタンで一つ一つ項目を開きながら欲しい機能にアクセスする。

その操作性には、いわゆる「ガラケー」のわずらわしさが、なんとなく思い出されます。

そのため筆者も最近のマルチファンクションメーターに触れるたび、『スマホなんかと連動してもうちょっと感覚的に使得ないものかなぁ』と思っていました。

恐らく、人の感覚に近い操作性というのはどんな商品にも求められていますし、バイクではエンジン・車体でそれを実現しようとしているわけですね。

かつて世界に先駆けてABSをバイクに導入したBMW。

感覚的に使えるITS付きマルチファンクションメーターで、バイクが人の意思にもう一歩あゆみ寄ってきてくれる。

そうしてBMWは、世界のバイクのインターフェイスにも新しい潮流を作っていくのではないかと思います。

まとめ

これまでも、R1200シリーズの乗り味は、滑らかであり時に鋭くもあり。

乗り手の意思と一体になってなじむキャラクターは、実に信頼性が高く、操っている喜びを存分に味合わせてくれるものです。

R1250シリーズでは、車重はR1200シリーズからおよそ5kgほど増量となったものの、MAXパワーは11psアップ。

同様にトルクもR1200より若干低い回転数で+1.8kg-mとなっています

そうして見ると、今回の可変バルブタイミング・リフト機構の採用は、乗り味にさらに奥深い楽しみ、そして卓越した爽快感をもたらしてくれるのだと思います。

更にインターフェイスは、コネクティビティーの採用で、これまで以上にバイクとの間柄をより親密なものにしてくれることでしょう。

世界のアドベンチャーバイク、そしてツーリングバイクの「原基」ともいうべきBMWのR1200GS/RT。

BMW ShiftCamを手に入れ、1250となった今、世界はそのディテールを静かに熱く見守っています。

BMW R1250GS/RT諸元

R1250RT R1250GS R1200GS
全高×全幅×全高(mm) 2222×985×1485 2207×952.5×1525 2207×953×1507
シート高(mm)
低/高を調整可能
805/825 850/870
800~900mmのシートオプションあり
ホイールベース(mm) 1,485 1,525 1,507
車重(kg) 279 249 244
エンジン形式 空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ(BMW ShiftCam) 空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ
ミッション 6速
総排気量 1,254 1,170
ボア×ストローク(mm) 102.5×76 101×73
圧縮比 12.5:1
最高出力 136ps/7,750rpm 125ps/7,750pm
最大トルク(kg-m/rpm) 14.5/6250 12.7/6500
燃料タンク容量(L) 25 20
Fブレーキ径 320mm×2 305mm×2
Rブレーキ径 276mm×1
Fタイヤ 120/70ZR17 120/70R19
Rタイヤ 180/55ZR17 170/60R17

諸元参照元;YOUNGMACHINE




この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事