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批評にさらされるバイクイベント
『奥入瀬渓流沿いをバイクが列「うるさい」』
写真引用元;デイリー東北2018年9月3日版
これは2018年9月3日、「デイリー東北」で配信された記事のタイトルです。
記事に取り上げられたのは、東北6県のライダーが交流するイベント。
筆者もメンバーの方にお会いしたことがあります。
彼らは東日本大震災被災地を周り、未だ経済復興のままならない地域の復興支援の必要性をアピールするツーリングも積極的に行っている人たち。
なので志は高く、その活動も素晴らしいと、いつも陰ながら応援しているところです。
地域振興の一環として自治体とタイアップで活動することも多い彼らなので、今回もイベントの開催や会場の使用許諾については手抜かりはなかった様子。
しかし、その場所は多くの観光客が静寂を楽しむ奥入瀬渓谷沿い。
十和田湖を目指し800台ものバイクが集結したことで、観光客などから批判の声が上がっているというのが地元紙による記事の内容です。
バイクでの地域振興も盛り上がりを見せる中、彼らの活動が叩かれているというのは、「バイク繋がり」の素晴らしさを知る筆者として何とも心惜しく思います。
今回は、ライダーの立場から、地域振興とバイクイベントの在り方、あるいはマナーなど「どういったところを気を付ければいいか」について考えていきたいと思います。
意味を持って走るには
筆者もこれまでいろいろなバイクイベントに参加してきました。
中でも、東北復興支援ツーリングの感動の深さと言うのは、今までのツーリングでは経験したことがないほど大きいものでした。
上記のツーリングは、筆者が参加するSNS団体が主催したもの。(今回批判を受けている団体とは別の団体です。)
筆者の参加する団体では、この東北復興支援ツーリングの他、
- 毎年児童虐待防止月間の11月に、オレンジの衣装を身にまとい、県・市の担当部局とタイアップで「児童虐待防止」をアピールするパレードラン
- クリスマスにサンタの格好で児童養護施設を慰問する「サンタライダーズ」
等、社会性の強い活動が多く、筆者もそれぞれに参加させていただいています。
流石に800台はないわけですが、それでも一度に70台80台くらいは集まり、何班化に分けて移動します。
筆者が参加した「オレンジラン」の一コマ
それくらい大きな数のバイクがまとまって走ると、走行中は多くの人の注目を浴びているのを感じますね。
我々の場合「児童虐待防止」と書かれたオレンジのベストを着ていたり、サンタの格好もそうですが、沿道の人にとってのインパクトはある意味「狙い」です。
その注目度が買われて、最近では県・市の児童福祉部局が児童虐待防止の公式なPRとして団体にオファーをしてくるまでになりました。
集合場所ではよく「今日は何の集まりですか?」と家族連れの人に聞かれ、趣旨を話すと納得してくれたり。
沿道の人や対向車からも笑顔で大きく手を振ってくれる人がいたりして、「参加してよかったなぁ」と思ったりします。
こうして参加者はそれぞれの思いを胸に「走る意味」を共有して走っているのです。
また、主催者の方々も、
- ネットでの参加者把握
- 道程の下見や案内の人の配置、
- 操列方法や連絡の取り方
など、事前に何度も打ち合わせを重ね、当日もかなり緊張感をもって望んでおられるのがわかります。
参加者に対しても、目的地となる児童養護施設での、場所柄をわきまえた行動についてもレクチャーがあるので、参加者もある程度の緊張感がありますね。
とにかく毎回、ボランティアでよくここまでしっかりやってくれるなと感心し、安全を守ってくれていることに感謝しながら参加しているところです。
10年以上続くイベント。
しかも社会性を帯びたものとなれば、その準備も入念さが欠かせないということでしょうか。
歩道からの視点を考慮する
話を青森に戻さなくてはいけませんね。
青森のイベントでもSNSで事前に人数把握をしていたようで、それなりの準備もあったのだと思います。
参加者側の視点
イベント告知のSNSには、
と、参加者に対するマナーの呼びかけもされていました。
参加された方のFacebookには笑顔と共に800台ものバイクがガッと集まった様子がアップされています。
そこから察する雰囲気も非常に和やかなもので、記事にあるような「危険」や「威圧感」のあるような雰囲気は想像できません。
コメント欄も
- 「沿道から笑顔で手を振ってくれている人もいたし、地元の方とも和やかに交流していたのに、どうしてこんな偏った書かれ方をするのか?」
- 「あの場所は観光シーズンは普段、観光バスやマイカーが大挙押し寄せて、意外にもともと結構うるさい場所、バイクだと騒がれるというのはどういうことだろう?」
と参加者も困惑している様子です。
このイベントは東北の6件それぞれをイメージするバンダナを付て、「東北の絆」をアピールするのもツーリングテーマの一つ。
趣旨としてこれはもっと評価されるべきイベントだと思いますし、これだけの数を事故なく集めたわけですから、イベントとしては成功だと言えるでしょう。
地元紙の記事は観光客目線で批判する内容で、イベント本来の意味を公平に扱ってくれていない気がします。
恐らく問題は音圧
後日別の記事の取材の中で、モーターサイクルジャーナリストの柏秀樹先生はこの件についてこう話されていました。
ノーマルマフラーだったとしても音が厚みを持ってしまうんですね。
なので、参加者の意識と沿道の捉え方との差が生まれてしまう可能性というのは十分にありますね。」
数10台でもかなり沿道にインパクトがあるのは筆者も経験したところです。
まして800台で走るというのは、沿道にとてつもなく大きなをインパクトを与えたはず。
何らかのアピールをメインにするならば、例えば市街地などでなら、見知らぬ人が足を止めてバイクを歓迎してくれる期待もあります。
しかし、奥入瀬渓谷は自然の静寂を求めて都会の雑踏からわざわ旅をしてくる人の多い観光スポット。
あの記事によって、観光客の言い分に支持が集まるのも仕方のないところです。
いみじくもデイリー東北の写真は「清流沿いを楽しむライダー、それを迷惑がる観光客」のコントラストがうまく撮れて(しまって)いる写真。
こういった場所ではやはり、児童虐待防止であれ、東北の絆であれ批判を浴びてしまうのかもしれませんね。
なので、イベントとして意味を持って走るなら、バイクの外から見た視点への配慮も大事にしなくてはいけないのだと思います。
もっと盛り上がる予定
最近では地域振興策の一環として地方自治体がバイクのツーリング先を誘致する動きも活発になり、国もそれを後押しするようになりました。
また、「Love the earth(ラブジアース)」等、アクティブツーリングの一環としてライダーが社会活動に積極的にかかわるイベントも盛況となっています。
もちろんソロツーリングも楽しいのですが、ネットを使って仲間の輪を広げたりすることから始まって、社会性のあるツーリングテーマを共有しながら楽しむ。
こうしたバイク環境の健全な醸成は、バイク業界全体として喜ばしいことです。
先日2018年8月に行政やバイク業界団体が集まって行われたBLF(バイクラブフォーラム)では、ちょうどバイク市場の活性策と地域振興などについても話し合われていました。
総評で、ヤマハ発動機の日高社長が、「良くなっている、もはやライダーはアウトローではない!」とかみしめるように語られたのが印象的なBLF。
笑顔で総評される日高社長
つまり日高社長は、かつて批判や規制の矢面に立たされることの多かったバイクは、反社会的なアウトローとしての認識を脱却したと喜ばれたわけです。
なので、せっかくここまで醸成されてきたバイクへの認知を、ちょっとしたさじ加減の間違いで台無しにしたくないと思うのは、きっと筆者だけではないのだと思います。
まとめ
例えば、隼で集まる鳥取県八頭町の「隼駅祭り」などは有名ですね。
「隼駅祭り」は地域の人たちに歓迎されて非常に良い形で毎年続いているお手本的なツーリングイベントの一つだと思います。
BLFでヤマハの日高社長がおっしゃったように、こうしてユーザーの質も向上し、社会的にもバイク市場は醸成されてきたのかもしれません。
しかし、その醸成がさらに続いていくためには、ライダーの思いやりや社会性。
平たく言えばやはり、マナーの良し悪しということにかかっているのだと思います。
とにかくバイクは平素から誤解を受けやすい乗り物。
実は筆者が参加する団体も、初期のころは外野から散々誤解され、代表の方が批判にさらされて大変だった時期もあったのだそうです。
しかし、回を重ねながらいろいろな人とつながり、理解の和を深めて今も続いている。
今回青森に集まった一団にしても志は確かなものだったと思うので、今回を教訓によりよい発展を期待したいと思います。
今後もバイク業界はイベントを盛り上げ、国もいろいろと後押しする方針です。
今も各地で大きなバイクイベントが開催されていますが、今後もいろいろと大きなバイクイベントは増えていくでしょう。
大抵のバイクイベントは「バイクっていいもんだね」と周囲の人にもバイクの魅力を訴求する狙いを持っています。
なので、イベントが逆にバイクに対するマイナスイメージを増殖させることは絶対に避けなければなりません。
参加する我々はマナーを、主宰する方には沿道への配慮を。
バイクの楽しみが独りよがりのものにならないよう、小さなことから気を付けていきたいですね。