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お~来たねぇ!
モーターサイクルナビゲーターでは先日PCX150の試乗記をお伝えしたばかり。
そのPCX150の記事を作成中、PCX HYBRIDが2018年9月14日(金)発売という知らせを聞き、筆者は「お~、来たねぇ」と思わず声を上げました。
PCX HYBRIDは既に昨年行われた東京モーターショーにおいて、ホンダの八郷社長が今期の発売が約束されていたモデル。
今後更なる免許制度の優遇が期待される125㏄AT車に新しい価値観を創造するべく登場するシティーコミューターです。
市販世界初となる二輪+ハイブリッド。
PCX HYBRIDは、二輪にどんな世界観をもたらしてくれるのでしょうか?
今回は、PCX HYBRIDの魅力や価値観を探っていこうと思います。
HYBIRIDなルックス
非常にエレガントなフォルムを持っているPCX125。
全体的にモリモリとした3Dの造形がグラマラスで、実車は写真で見る以上に美しく見えます。
外見的にHYBRIDではいったいどのような点で区別されるのでしょうか?
上が現行のPCX125、下がHYBRIDです。
外層的な比較としては「フロントサイドに「HYBRID」の文字が追加されているだけの様に見えますね。
ただ、わかりやすいのはボディーカラー。
HYBRIDの「パールダークナイトブルー」はスタンダードのPCX125やPCX150に設定の無い「HYBRID専用色」。
なので、色を見ればHYBRIDだとわかります。
さらに、この色に合わせて、
PCX HYBRIDではヘッドライトも、
テールライトも、消灯時にブルーの色が見えるようにデザインされているのが特徴です。
恐らく街中で見分けるとすればこの辺がでわかりますね。
ちなみにICタグもHYBRID専用。
機能的な部分には変更はありませんが、こちらもやはりブルーイメージが強調されています。
走りが選べるHYBRID
面白いのは、HYBRIDに採用されている専用メーターの内容。
エレガントなデジタルメーターの基本デザインは同じ。
HYBRIDではスピードメーター上部にモーターのアシストの度合いを測るアシストメーターが設けられています。
さらに、スタンダードのPCX125にはない「D」という文字が見えますね。
これはHYBRIDシステムのアシストモードセレクターのディスプレイ部分です。
PCX HYBRIDは、リチウムイオン電池を電源として、スターターモーターを駆動アシストに利用するシステムになっています。
実はこのシステム、単に駆動力のアシストをするだけではありません。
「Dモード」・「Sモード」・「アイドリングモード」という3つのモードを備え、乗り味に変化を持たせるようになっているのが特長なのです。
「Dモード」は燃費とパワーの両立したいわば汎用モード。
「Sモード」はアクセル中開度までのアシスト力を多くするモードで、スポーツモードと言っていいでしょう。
そしてアイドリングモードは、渋滞などでストップ&ゴーを繰り返すような状況でアイドリングストップをOFFにした時のモード。
アシスト特性としては「Dモード」に準じるそうです。
流石にまだ試乗車には乗れないわけですが、この「Sモード」の存在が面白そうで気になりますね。
PCX HYBRIDの乗り味は?
電動アシストシステムの、「Sモード」でかつての2スト通勤快速のようなダッシュが決められるのか?
そんな期待をしてしまうのは、恐らく筆者だけではないでしょう。
動力関係の諸元を他のPCXシリーズの車両と比較しながら、PCX HYBRIDの動力性を占ってみます。
PCX HYBRID |
PCX125 |
PCX150 | |
エンジン型式 | JF84E-K96 /交流同期電動機付き |
JF81E | KF18E |
総排気量(cm3) | 124 | 124 | 152 |
内径×行程(mm) | 52.4×57.9 | 52.4×57.9 | 58.0×57.9 |
圧縮比 | 11.0:1 | 11.0:1 | 10.6:1 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 9.0[12]/8,500 | 9.0[12]/8,500 | 10[14]/8,500 |
電動機(モーター)最高出力(kW[PS]/rpm) |
1.4[1.9]/3,000 | ー | ー |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 12[1.2]/5,000 | 12[1.2]/5,000 | 14[1.4]/5,000 |
電動機(モーター)最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) |
4.3[0.44]/3,000 | ー | ー |
電動機(モーター)定格出力(kW) | 0.36 | ー | ー |
主電池種類 | リチウムイオン電池 | ー | ー |
車両重量(kg) | 135 | 130 | 131 |
国土交通省届出値: 定地燃費値 (km/h) |
55.0(60)〈2名乗車時〉 | 54.6(60)〈2名乗車時〉 | 52.9(60)〈2名乗車時〉 |
燃料消費率 (km/L)WMTCモード値 (クラス) |
51.9(クラス 1)〈1名乗車時〉 | 50.7(クラス 1)〈1名乗車時〉 | 45.6 (クラス2-1) <1名乗車時> |
こうしてシリーズの諸元を比べるとわかる通り、PCX HYBRIDはPCX125のエンジンにHYBRID機構を追加したものと考えてよいようですね。
エンジンの形式名は違いますが、エンジン単体の諸元数値は全く同じです。
ただ、燃費を見ると(あくまで届け出平均値ということですが)、2名乗車時で0.4㎞/L、1名乗車で1.2km/Lの向上。
驚くほど燃費が上がるのかと言うとそうでもないようです。
その代わりと言っていいのか、8,500回転でエンジンが最大出力12PSを発揮する中で、モーターは3000回転で1.9PSを発揮。
エンジンの最大トルクが5,000回転で12N・m出ている中、モーターは3000回転で1.4N・m。
HYBRIDも開発の狙いによっていろいろなタイプがあるわけですが、PCX HYBRIDの場合は燃費型と言うより、加速アシスト型のHYBRIDだと言えそうです。
先日PCX150を試乗した筆者ですが、やはり初速ではアクセルをひねってから、少し遅れて速度が上がってくる印象を受けました。
PCX HYBRIDではこの加速のまったり感に、もう少しメリハリを利かせてくれるのは間違いなさそうです。
しかし、総重量が5㎏アップしているわけで、恐らく重量に相殺される部分も少なからずあるかもしれませんね。
2スト通勤快速のようなダッシュ感があるのかどうか?
これはやはり、「Dモード」・「Sモード」でも違ってくるでしょうし、届け出平均燃費で考えているのとは違うでしょうから、実際のところは試乗車の登場を待つしかないでしょうね。
PCX HYBRIDのここが気になる
既にホンダのホームページ上に発表されている写真を見て、筆者が気になっているのは使い勝手と価格の面。
PCX125/150のトランク容量は、前モデルより3リットルアップして、28リットルになっています。
これに対し、PCX HYBRIDではパッセンジャー(同乗者)用メットを入れるスペースがバッテリーなどに占領されてしまっています。
このためPCX HYBRIDのトランク容量は23リットルに。
確かにこの23リットルも決して狭いとは言い難いのですが、せっかくスクーターなのですから、トランクスペースは広ければ広いほど良いのは言うまでもありません。
しかしそこは流石に考えたもので、PCX HYBRIDにはシートヒンジ(シートの開閉部)にヘルメットホルダーが追加されていますね。
とはいえ、少々の燃費と加速性能のアップと天秤にかけて、このトランクスペース5リットル減をどう思うか?
これはじっくり考える必要がありそうです。
また、価格もPCX125が税込み342,360円なのに対し、PCX HYBRIDは432,000円。
やはり、購入時に試乗車を比べて、加速性能が期待以上のものだと思えればこの約90,000円UPにも納得できるのかもしれません。
ただ、小型普通二輪以上の免許を持っているのであれば、373,680円(ABSは395,280円)で高速道路走行が可能なPCX150も買えるわけです。
任意保険をマイカーのファミリー特約で賄えるのが125㏄のおいしいところ。
通勤用のセカンドバイクにと考えるなら、この選択も悩ましいですね。
広がるHYBRIDの世界
世界初のHYBRIDコミュータ。
これを「燃費番長」としてではなくアシスト機構で走りにスパイスを効かせようとしている点が、ホンダらしく手面白い点だと思います。
恐らくライバルメーカーもコミューターのHYBRID化を進めてくる模様。
ヤマハは間もなく、タイで発売している「グランドフィラーノ」というスクーターにハイブリッドモデル追加を発表する予定です。
写真はスタンダードのグランドフィラーノ
若干の違いはありますが、先日お伝えしたN-MAXと同じ可変バルブのブルーコアエンジン+HYBRIDとなる見込み。
国内でも、来年2月にはN-MAXのモデルチェンジがあるようなので、「もしかして?」と言われているようです。
筆者としてはLMW+HYBRIDの方が面白いと思っていたりますが、どうなるのでしょう?
いずれにしても、現行スタンダード車のセールスが好調なPCXとN-MAXのコミューター2台トップ。
エレガント方面とスポーティー方面の住み分けがはっきりした2台の中で、HYBRIDのアシストがそれぞれの世界観をどう広げていってくれるのでしょうか?
その世界観の広がりに期待したいですね。
まとめ
今回はあくまで諸元に書かれた数値をもとに予測をしたわけですが、そこはホンダ技研さんです。
値段や使い勝手の面も、「実際に使ってみたら気にならなかった」ということもあるはず。
いや、きっとそうでしょう。
筆者ごときの予想などは、いい方に裏切ってくれるはずです。
いずれにしても、このPCX HYBRIDの価値観と言うのは、今では予測されていない部分が多いのではないかと思います。
この原稿は2018年7月11日に執筆したもの。
つまりPCX HYBRIDの発売前なわけですが、先日試乗記をお届けしたように、PCX150であればその試乗車は各地に用意されているようです。
一度スタンダードのPCXの走りをお確かめいただき、9月発売の際にはHYBRIDの走りと比較されると、HYBRIDの存在感と言うのはよりはっきりと感じられるのではないでしょうか?
その時は、乗り味の楽しさと価格を天秤にかけて悩んだり?
それもまた、バイク選びの楽しさの一つでしょう。
ひとまず、お近くのお店の試乗車で是非!!