目次
ツーリングプランはわかりづらい?
ETC二輪車ツーリングプラン
もうお使いになったでしょうか?
筆者もこれまで何度か「これなら多くのライダーに喜んでもらえるはず」と思い、ETC二輪車ツーリングプラン(以下TP)についての記事をまとめてきました。
実はこの記事をまとめたとき、発表されてまもないプレス発表をもとにして執筆したので、大方の利用方法は前回と同じものと思っていました。
しかしいざNEXCO各社の受け付けフォームがオープンしてみると、
- 前回とはTPを予約できる期限が異なっている。(以前;エリア内出口ICを通過する前まで⇒今回;エリア内入口通過前まで)
- NEXCO間でも利用の仕方に微妙な違いがある。(1.についてNEXCO中日本のみがエリア内出口IC通過前までを申込期限とする)
また、前回から問題点として指摘されているのは
- 走行したいツーリングルートが複数のエリアにまたがっていると、素直に利用できない場合が多い。
- エリア外から連続走行で利用可能な場合もあれば、入口ICで乗りなおす必要がある場合もある。
- 利用の仕方によっては一般料金より割高になる場合がある。
ということで、賢く利用するには事前に一般料金との比較など、ルート上の利用条件を積極的に調べてから利用する必要があり、綿密な計画だてをしないと損をしてしまうこともあるようです。
簡単に言えば、「わかりづらい」というのはどうしても否めないところではないでしょうか?
今回はETC二輪車ツーリングプランについて、利用上の注意点などをまとめていきたいと思います。
例えば東北道・常磐道・磐越道コースの場合
筆者がTPの複雑さを実感したのは、筆者が参加した東北復興支援ツーリングで石巻に行く際のお知らせづくり。
複数のドラぷら併用案も
今回は参加メンバーに少しでも通行料を安くあげてもらいながら、その分を東北に還元していただけるのではないかということで、TPの利用手引きの作成を思い立ちました。
元々この東北道・常磐道・磐越道コースのエリアは、東北支援ツーリングを視野に入れて昨年よりも北へ延ばされたエリア。
なので、今回の我々の利用は理にかなった利用だと思います。
しかしメンバーにTPの利用手引きを作成していると、「どこから乗ってもお得なので使って下さい!」と単純にお勧めできるほど簡単なものでないことがわかってきます。
ETC二輪車ツーリングプラン東北道・常磐道・磐越道コース。
北限は東北道で「福島飯坂」、常磐道では「いわき」までになっています。
最大のメリットといえば、このエリア内を定額5000円で自由に3日間乗り降り自由に周遊できることです。
我々の行先である石巻までの有料最終ICは「鳴瀬奥松島」。
なので、このエリアからさらに35㎞程足りない形になります。
そのため相馬まではTPを利用し、さらに鳴瀬奥松島まではETC軽自動車等一般料金(土日割引)で移動するということになります。
先日モーターサイクルナビゲーターでは、このTPのほかにも、「東北観光フリーパス」という東北限定の定額高速周遊プランがあることもお伝えしました。
このうちの「南東北周遊プラン」ならちょうど、いわき勿来(なこそ)から鳴瀬奥松島までがカバーされ、この区間を2日間4,500円で利用することができます。
そこでまず、TPと東北観光フリーパスとを併用することによって9,500円で往復することを考えました。
ちなみに三郷本線⇒鳴瀬奥松島の土日ETC軽自動車等の片道料金は5,040円ですから、TPと南東北周遊プランの併用なら往復で580円はお得になります。
NEXCO東日本にもTPと南東北周遊プランの併用が可能であることは確認できたので、最初はこれをメンバーに伝えるつもりでした。
事前に一般ETC料金との比較を!
しかし、TPの東北道・常磐道・磐越道コースの北限、つまり、相馬IC⇒鳴瀬奥松島間の片道料金を調べたところ、1,640円(6/2 10:00到着として)であることがわかりました。
つまりこの区間の往復が3,280円なので、TPの利用で8,280円で往復が可能になるため、南東北周遊プランの併用よりもお得。
結局お知らせにはこちらを載せました。
TPも東北観光フリーパスも高速を一定額で周遊可能にする「ドラぷら」商品。
こうして事前にNEXCOのドラぷら「料金・ルート・交通情報」で一般料金との比較をしないと損をする可能性があるのはTPも同じです。
※このとき休日料金や深夜料金も加味して計算されるので、出発予定日時を入力することが肝心です。
具体的にもう一つ例を挙げてみると、常磐道でも、三郷本線からひたちなかまで魚を食べに行きたいようなとき、土日料金片道は1,970円。
そこから「夜は餃子」と言って宇都宮市街に降りて帰ってくるなら、
三郷本線⇒ひたちなか(1,970円)+ひたちなか⇒宇都宮(1,910円)+宇都宮⇒川口(1,990円)=5,870円
なのでTPの方が870円お得です。
ですが、ひたちなかのお魚で満足して帰るだけなら、TP料金5,000円は割高になります。
つまりTPの利用に際しては、このように目的とルートをしっかりと決めて事前に比べておく必要があるのです。
プランの適応要件がとにかく難解
そして今回石巻に行くにあたってお知らせを作成するのに最も難解だったのは、TPの適応要件。
なのでもう一度、関東からTPを利用して鳴瀬奥松島まで行くことを例にして考えていきます。
それはまるでクイズ
たとえば、首都高や外環道からは鳴瀬奥松島まで、そのまま連続走行してもTPは適応になります。
しかし、例えば圏央道を高尾山から利用して連続走行で鳴瀬奥松島に行ってしまうと、TPは全区間適応されません。
「さてそれはなぜでしょう?」
その解答を検証するべく、実際に走ってみました。
例えば、大泉から外環道に入ったとしましょう。
外環から東北道に合流するときは、
川口JCTから合流すれば自動的に、
浦和本線料金所を通過するので、これだけで入口要件を満たします。
なので、このままエリア外の鳴瀬奥松島ICまで連続走行で福島飯坂を通過しても、エリア内はTP料金が適応になるのです。
同様に外環道から常磐道に合流する際も、三郷本線料金所を通過するので、エリア外の鳴瀬奥松島ICまで連続走行で相馬を通過しても、エリア内はTP料金適応となります。
しかし、筆者の住む多摩地域に近い高尾山からの進入で圏央道からの流入の場合、
エリアの始まりである白岡菖蒲を通過して
東北道、あるいは常磐道に合流しても、
- TPエリア内の入口ゲートがない。
- エリア北限の福島飯坂・相馬ともに通過となってしまう。
- 出口ゲートとなる鳴瀬奥松島はエリア外のゲート。
ということから、全区間TP料金が適応されないのです。
もし、高尾山から圏央道を乗ったのであれば、エリアの始まりである白岡菖蒲をいったん降りて、
この白岡菖蒲ICの入口ゲートをくぐって高速に入りなおす必要があります。
同様に、成田方面からの合流の場合もそのまま連続走行はできず、エリアの始まりである「つくば牛久IC」の入り口ゲートをくぐらないとTP料金の適応外です。
スクロールも大変だと思いますので、もう一度エリアの図を用意しますね。
では、エリア外からの侵入で、エリア内の出口ゲートをくぐった場合はTP料金が適応になるのか?
これについてNEXCO東日本に確認したところ、エリア外である高尾山からの進入であっても、福島飯坂・相馬以南のエリア内の出口ICをくぐれば、エリア内はTP料金が適応になるそうです。
なので、高尾山⇒白岡菖蒲間土日1,630円(ETC2.0は1,570円)のエリア外料金ばTP料別になりますが、エリア内はTP料金の3日間5,000円で周遊走行が可能。ということになります。
つまり、TPを利用する場合、エリア内の入り口ICゲートか、エリア内の出口ICゲートを通過することがTPの利用要件なのです。
まとめると、
- エリア外IC進入+エリア外IC下車は×。
- エリア内IC進入+エリア外IC下車は〇。
- エリア外IC進入+エリア内IC下車も〇。
ということですね。
NEXCO東日本お客様センターに電話がベスト
要件が適応されると3日間、(その他のコースは2日間)周遊が可能なTP。
ついつい複雑な往路の入り口要件の確認にとらわれがちで、復路の確認を怠りがちになります。
先述の通りエリア外から高速に入った場合、エリア内のどれかの出口ゲートを通過しないと、複数日エリア内定額というせっかくのTPの恩恵に与ることができません。
つまり、帰りのルートもしっかり見ておかないと、片道だけが5,000円となってかえって損をすることもあるので注意が必要なのです。
これらは何度も筆者がNEXCO東日本に納得がいくまで問い合わせて確かめた部分。
とにかくツーリングの計画を立てて、TPを利用したい場合には、
- 出発地最寄りICがエリア外なのかどうか?
- 目的地の最寄りICがエリア外なのかどうか?
- 一般ETC料金はどうか?
- 復路は往路と同じ道筋でTP料金が適応になるか?
予定するルートでTPを利用する際の疑問点を箇条書きにして、NEXCO東日本お客様センターに往路・復路について確認をするのがベストです。
NEXCO東日本お客様センターは24時間対応で、電話番号は03-5338-7524。
お問い合わせの際はお間違えの無いようにお願いいたします。
実施地域拡大後も「地方無視」の声
バイクツーリングを地方の活性化に役立てようという趣旨で始まったETC二輪車ツーリングプラン。
初めて実施された2017年の「首都圏ツーリングプラン」は、社会実験的な意味合いも強く、東京を中心にした160㎞圏内のみでの実施されました。
このためネット上には「地方無視の政策」などと嘲笑されることもあったようです。
しかし、初回の実施でその効果が期待できるとされ、2018年の今年は(新潟を除く)東北から九州まで地域を拡大して実施されています。
ただ、それでもなおネット上では「地方無視」という不満の声も散見されます。
果たしてこれはなぜなのか?
それはTPの「首都圏コース」について東京近郊をクローズアップするとわかります。
例えば都心に住んでいれば、静岡も高崎も宇都宮も富津も5つのコースを選んでツーリングの計画を立てることもできるでしょう。
しかし、少しでも都心を離れた地域に住むライダーがツーリングをする場合は、複数のTPエリアをまたぐことが多くなります。
そうなると「TPの恩恵は都市部だけ?」と言われても仕方ありません。
これはやはり、今回策定された中部地区や、
関西地区を見てもその傾向は明らかで、
都市部からの移動が前提になっているように見えます。
ライダーは都市部にしかいないわけではなく、近郊に住むライダーが他県にツーリングすることも日常的なこと。
なので、地方を元気にするための政策が、新たな地域格差をもたらしているとすれば、TPを策定された方にとっても不本意でしょう。
2輪4輪料金分化の実現を!
TPを推進しているのは二輪車業界団体と、政策を担うバイク議連の議員さんたちの差し渡しをしている一般社団法人日本二輪車文化協会さんです。
彼らは現在、バイクツーリングを地方創生の力にしようということで、国に対して有料道路料金2輪4輪の分化を強く要望しています。
しかし道路当局の回答は「すぐにはできない」とのこと。
「ならば今すぐできることをしてくれ」と、昨年2017年7月に始まったのが「首都圏ツーリングプラン」なのです。
昨年に引き続き、日本二輪車文化協会さんとバイク議連さんは、バイクの通行料金二輪とは分化することを要望し続けています。
首都圏ツーリングプランを「成功」とみて、TPが各地に広がったのは良いことだと思います。
しかし、彼らにしても当局に対して、「いつまでTPでお茶を濁すつもりだ?」
言う思いでいるのだそうです。
これまでお話したように、現状のTPは条件が整わないと、その恩恵を受けられない面もあります。
ひいてはそれが地域格差として受け取られても仕方ないのも現状でしょう。
やはり、すべてのライダーがまんべんなく利益に服するには、2輪4輪の有料道路料金分化がベストだと思います。
例えば、東京アクアラインは開通当初片道5,050円でしたが、今では森田健作知事のおかげで800円となっていますね。
森田知事の英断値下げによってアクアラインの通行料が増大し、房総半島の観光収入もアップ。
今ではこの収益の中から建設費をペイできるようになったといいます。
当局が何を守っているのかはわかりませんが、高い通行料を堅持することにうまみがないことは、既に証明されているように思います。
日本二輪車文化協会とバイク議連さんの働きに期待し、来年がダメでもオリンピックイヤーの2020年までには何とかしてほしいものですね。