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外観にあふれる「時代の凄み」
往年の名車Z900、そして750RSのダブルネームを拝命して登場したカワサキ Z900RS。
昨年2017年12月1日に発売以来、既に幅広い層のライダーから支持を集めていますね。
そしてさらに2018年の今年3月1日。
Z900RSには新たに「Z900RS CAFE」が加わりました。
技術へのあくなき挑戦で、媚びることなく時代に斬り込んでいくのが「Z」の精神。
現代のZ900RS CAFEも、かつてないほどの厳しい環境規制に挑戦し、新たな時代に斬り込もうとしています。
一見、このZ900RS CAFEは、スタンダードのZ900RSにビキニカウルをポンとつけただけだと思われがちです。
しかし細部を見ていけば、カワサキの創ってきた「時代の凄み」を新しく伝えようという勢いが感じられます。
今回はZ900RS CAFEを詳しく見ていきながら、その趣の深さについて考えてみたいと思います。
新発売のなつかしさ
「ネオレトロ」という呼び方をすると、受け継がれたティアドロップに一瞬「まんまそうだな」と納得してしまいそうになるZ900RSの外観。
しかし深く見れば見るほど、「そう来たか」と唸ってしまうのがバイクの面白いところだと思います。
丸みがレトロな「面構え」のビキニカウルに納まるヘッドライトはLED。
さらにウインカーもLEDを使ったかなりスタイリッシュなものになっていますね。
しっかりと「Z」らしさを主張するテールビューも同様に、ナンバー灯を含むすべての灯火類がLEDでまとめられています。
メーター類もアナログ感を保ちつつ、中央にはシフトインジケーターや燃費計なども表示できる機能的な液晶メーターを配置。
懐かしくもあり新しくもあり。
単純に外観をクローズアップするだけでも、Z900RS CAFEは、時代の交錯する「ネオレトロ」特有の面白さを味わせてくれます。
足元から予感できる「新しさ」
視点を下げていくと、目につくのはスポーツバイク然とした足回り。
フロントの倒立サスには4ポットキャリパーがラジアルマウントで装着されています。
リアはヘリテイジネイキットにありがちなツインサスではなく、走りを求めたもモノサスとなっているのが「Z」の系譜の中では斬新と言えるでしょう。
さらに、アシスト付きスリッパークラッチやトラクションコントローラーなど、運動性能に寄与する先進装備も充実。
これらの装備は、「ネオレトロ」とくくられる中でもZ900RS CAFEが、単なる懐古主義的な「焼き直し」ではないことを物語っています。
小変更から見える大きな違い
2台をこうして並べてみても、「CAFE」への変化はやはりビキニカウルに集約されているように見えます。
また、写真では今一つわかりにくい点ですが、サイレンサーがバフ掛けではなく、あえてくすみを持たせたサテン調に。
実車ではこれがちょっとチタンぽっくもあり、なかなかカッコいい部分です。
しかしそれだけではなく、諸元表をみるとライディングポジションに関わるいくつかのパーツに変更があるのがわかります。
そのあたりを詳しく見てみることにしましょう。
ハンドル回り
例えばそれはハンドル回りの違い。
諸元から「全長×全幅×全高」を見てみます。
スタンダードのZ900RSでは2,100mm×865mm×1,150mm。
そしてZ900RS CAFEでは、2,100mm×845mm×1,190mmとなります。
まずハンドル幅ですが20㎜短くなりますね。
「ナローハンドル」ということではなくて、若干手前に絞り込まれた感じにもなっているため、上から見た手の位置は大きく変わらないように見えます。
横から見ると、確かに「CAFE」のハンドル位置がスタンダードより若干低くなっています。
高さは「全高」をミラーの高さとして単純に類推すると、3㎝以上4㎝未満の差で低くなっているものと思います。
つまり自然な位置で、高さだけを変えているというのがわかりますね。
あくまでデーターと写真を見比べただけに過ぎませんが、このハンドルを見ただけでも、与えられているキャラクターの違いが予感できますね。
シート周り
同じようにシート周りにも違いが見られます。
お分かりになりますでしょうか?
シートは「CAFE」の方が少し肉厚になって、ライダー側後端は、シングルシートをイメージしているのか、ストッパーのような盛り上がりがありますね。
こちらも諸元で確認すると、スタンダードのシート高が800mmであるのに対し、Z900RS CAFEでは820mmと20㎜アップしているのが確認できます。
先日スタンダードのZ900RSに試乗して大変好印象だったのですが、
このタンク回りが非常にスマートな面構成になっていて、ニーグリップもしやすく、何より脚を素直に下におろすことができて足付きが非常に楽でした。
先日実車のCAFEもに跨らせていただきましたが、スタンダードと比べるとポジションは確かに先述の通り。
微妙に腰高で、上体も少し前傾した感じになります。
ただ、このタンク回りのスマートなラインのおかげでシート高が20mm高くなっても、足つき性にはさほど大きく影響せず足つきは自然な感じでした。
ちなみにこのとき見せていただいたZ900RS CAFEの色は写真のようなグレー。
写真でみると地味な色に見えてしまうのですが、これは「パールストームグレー」というカラー。
実車で見ると非常に深みのある素晴らしい色で、吸い込まれていくような魅力があります。
今回は室内展示だったのですが、自然光の下ではパールの光沢がよりいっそう美しく見えるものと思います。
もちろんライムグリーンの捨てがたいわけですが、グレーは日本仕様専用色ということで希少価値もあり、これは迷いますね。
レトロより「ネオ」な走り
見た目だけでも深く楽しむことができるZ900RS CAFE。
スタンダードのZ900RSについては発売と同時に行われた試乗会に参加し、その模様はこちらの記事でお伝えしています。
「見かけ以上にアグレッシブ」
一言でいえばそういう感じなわけですが、CAFEの乗り味を占う前に、ざっくりとその乗り味をおさらいしてみます。
まず跨ってみると、すっとマシンを引き起こしただけで、見た目の重厚さが裏切られます。
サスの初期の動きはしなやかで軟らかく、サスが奥に入るにしたがってしっかりする印象。
それらは既に、軽くしなやかな動きを予感させてくれました。
走らせてみると、確かに速度が増すごとに安定感が増していき、切り返しもヒラリヒラリと軽快なリズムで決まっていきます。
コーナーには積極的にアプローチして寝かしこみ、豪快にアクセルを開けてて立ち上がる。
そんなふうに、操ることを楽しみながら、実にカワサキらしいキャラクターを楽しむことができます。
乗り終えた後、「ネオレトロという先入観は、すっかりなくなっていた。」
多くのライダーがZ900RSに試乗したとすれば、おそらくこの感想は筆者だけのものではなくなるのでしょう。
CAFEの走りを占う
外観もさることながら、ライディングポジションが少しスポーティーな味付けになったZ900RS CAFE。
カフェとスタンダードではエンジン諸元に差はなく、与えられた違いというのは数㎝とわずかなものです。
しかし、Z900RS CAFEではこうした変更が、元々の乗り味をよりアグレッシブにしてくれるのではないかと思います。
例えばサーキット走行やワインディングでの切り返し。
豪快に操作感を味わえるのがスタンダードの乗り味の楽しいところ。
CAFEではシートの腰高感はより素早い寝かし込みに貢献し、加えてハンドルの低さはフロント加重で曲がりやすい姿勢を作るのに貢献するでしょう。
旋回のきっかけを作りやすくなることで、操る楽しさがより深まっていく。
そんなふうに、CAFEではあくまでライダーが「主人公」のになって走りをリードできるのではないかと思います。
また、ビキニカウルに守られて、ストレートを立ち上がっていくライダーの勇ましい姿も想像できますね。
フルカウルほどではないにしろ、風を切ってくれるビキニカウルの存在は高速域の頼もしい味方。
きっとツーリング中の疲れの軽減にも一役買ってくれるのは間違いないでしょう。
そもそもカフェってなんだっけ?
そもそもバイクの名前になんで「カフェ」なのか?
世代によってはそれをふと疑問に感じる人がいるかもしれませんね。
簡単に言うとこれは1960年代のロンドン。
エースカフェと呼ばれるカフェに夜な夜な若者たちがバイクでに集まり、レースを行ったのがその名の由来だと言われています。
レースは、ジュークボックスにコインを入れたのを合図にスタート。
一曲が終わるまでにまた店に戻るといいうクレイジーなレースだったと聞いています。
そこに集まっていたは、当時のレーサーをまねて改造した、今でいうレーサーレプリカバイクたち。
つまりこれが「カフェレーサー」というわけですね。
バイクを思い思いにいじること、カスタムで自身をアピールすること、そしてバイクに夢をかけること。
「カフェ」ではそうしたバイク文化が花開きました。
単なるスタイルとしてだけではなく、今も当時の夢や意気込みが、ヴィンテージとしてオマージュされるわけです。
「Zの魂」を先の世代へつなぐ
かつてカワサキは欧州のレースで表彰台の常連として名を連ね、世界にMade in Japanの技術力を見せつけていました。
←1969年世界GP出場の「H1R」
バイクに息づくその意気込みはまさに、「魂」と言ってよいものなのかもしれません。
Z900RS CAFEのあの丸みを帯びたビキニカウルは、カワサキが世界に挑んでいった当時の「意気込み」をオマージュしたもの。
と言っても、スタンダードのZ900RSが単なる懐古主義的なバイクではないように、Z900RS CAFEもまた然りです。
Z1以来、時代に斬り込でいった先進性こそが「Z」を名乗る価値。
それを知る世代ならきっと、Z900RS CAFEの乗り味に、新たな「Zイズム」を再確認するのではないでしょうか?
新しい世代の人たちにもぜひ、Z900RS CAFEに与えられた「Zの魂」を新鮮に感じてもらい、世代を超えて乗り継いでほしいと思います。
Z900RS/Z900RS CAFE諸元表
名 称 (通称名) |
Z900RS Z900RS CAFE |
|
---|---|---|
型式 | 2BL-ZR900C | |
全長×全幅×全高 | Z900RS 2,100mm×865mm×1,150mmZ900RS CAFE 2,100mm×845mm×1,190mm |
|
軸間距離 | 1,470mm | |
最低地上高 | 130mm | |
シート高 | Z900RS 800mmZ900RS CAFE 820mm |
|
キャスター/トレール | 25.0°/98mm | |
エンジン種類/弁方式 | 水冷4ストローク 並列4気筒/DOHC4バルブ |
|
総排気量 | 948cm³ | |
内径×行程/圧縮比 | 73.4mm×56.0mm/10.8:1 | |
最高出力 | 82kW(111PS)/8,500rpm | |
最大トルク | 98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm | |
始動方式 | セルフスターター | |
点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | |
潤滑方式 | ウェットサンプ | |
エンジンオイル容量 | 4.2L | |
燃料供給方式 | フューエルインジェクション | |
トランスミッション形式 | 常噛6段リターン | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
ギヤ ・ レシオ |
1速 | 2.916(35/12) |
2速 | 2.058(35/17) | |
3速 | 1.650(33/20) | |
4速 | 1.409(31/22) | |
5速 | 1.222(33/27) | |
6速 | 0.966(29/30) | |
一次減速比/二次減速比 | 1.627(83/51) / 2.800(42/15) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック (インナーチューブ径 41mm) |
後 | スイングアーム | |
ホイールトラベル | 前 | 120mm |
後 | 140mm | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70 ZR17M/C(58W) |
後 | 180/55 ZR17M/C(73W) | |
ホイールサイズ | 前 | 17M/C×MT3.50 |
後 | 17M/C×MT5.50 | |
ブレーキ形式 | 前 | デュアルディスク300mm(外径) |
後 | シングルディスク250mm(外径) | |
ステアリングアングル (左/右) | 35°/ 35° | |
車両重量 | Z900RS 215kgZ900RS CAFE 217kg |
|
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン | |
燃料タンク 容 量 |
17L | |
燃料消費率(km/L) |
28.5km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時) | |
20.0㎞/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)※3 | ||
最小回転半径 | 2.9m | |
カ ラ ー | Z900RS キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ メタリックスパークブラックZ900RS CAFE ヴィンテージライムグリーン パールストームグレー |
|
メ ー カー 希望小売価格 |
Z900RS (キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ) 1,328,400円 (本体価格1,230,000円、消費税98,400円)(メタリックスパークブラック) 1,296,000円 (本体価格1,200,000円、消費税96,000円)Z900RS CAFE 1,350,000円 (本体価格1,250,000円、消費税100,000円) |