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実車で見るKLX230、その印象は?
今年の10月に発売が予定されているKawasakiのKLX230とKLX230R。
Kawasakiはその発売を前に、このほどプレスを対象とした説明会と試乗会を開催しました。
軽く字数上限に達してしまうほど開発陣の熱意は熱く、この機で「幅広い層のライダーにオフロードの楽しみを今一度提案したい」というメーカーの強い気持ちがひしひしと伝わってきます。
今回モーターサイクルナビゲーターは、説明会翌日に行われた試乗会にも参加。
KLX230/KLX230Rの乗り味を静岡県にある朝霧高原イーハトーブの森で確かめてきましたので、両車の魅力をしっかりとお伝えしたいと思います。
親しみを感じる実際のスケール感
広報写真をパッと見ただけで新車を批評する人もいますね。
でも、私なら実車のスケール感を感じながら造り手の意図を探りたいと思うんです。
その実車がどんな第一印象をくれるのか?
それが楽しみなんですよね。
そして、いよいよ実車を拝見!
出会った実車は、広報写真で見た印象よりも若干大きく見えて、身長162㎝の私にとっては、まさに「丁度いい」という言葉を形にしたようなサイズ感。
「ライト回りが大きすぎないか?」と言われるわけですが、実車を見た印象としてはそれほど違和感を感じるほどの大きさではありません。
では小さいのか?と言われればやはり大き目なのですが、全体のデザインによくまとまっていいて、すぐに見慣れてきます。
会場に用意されていたのは、ライムグリーンのほか、
エボニー(ブラック)もありました。
ゴールドのデカールが精悍さをアップ。
小さいというよりも「スマートなバイクだな」というのが実写を見ての第一印象。
また、コンペティションモデルのKLX230Rは、保安部品がないこともそう思わせるところですが、
ブロックタイヤのコマの大きさや、マフラーエンドの形状などの違いが、全体によりスパルタンな雰囲気を漂わせています。
ハイシートであることも手伝って、ロードモデルのKLX230よりも若干大きく見えました。
ライポジや足つき性など
KLX230のシート高は885㎜。
CRF250Lよりも10㎜高い設定です。
私の身長は162㎝で座高は91㎝。
スリムな車体のおかげで足をまっすぐに下せるので、つま先にもまだ余裕があり、小柄な私でもお尻をずらすことなく自然に乗ることができました。
ポジションに関してはハンドルが近く上半身は楽。
すっと乗ったポジションの中で、メーターも視認性の良い角度になっています。
ちなみにセローと比べてみた
Kawasakiとしては全く比較を行っていないというセローですが、ライバル視されることも想定してポジションを比較しました。
セローのシート高は830㎜、シートが低い分ハンドルもKLXよりを高く感じ、ポジションはセローの方がゆったりとした印象でした。
セローは林道でスタックした際に両足でマシンを押し出す「2輪2足」を想定しているマウンテントレール。
これに対して、KLX230はマシンに多様な動きを与えることを楽しむためにあえて高めのシート高を選択しています。
その狙い通りKLX230では、またがった瞬間からロールの動きがシャープな印象です。
これが開発陣が言っていた「趣きの違い」ということですね。
また、KLX250Rのシート高は925㎜。
街乗りはしないバイクので、これはあくまで参考映像。
そもそも足つき云々のバイクではありません。
ですが、KLX230より腰高になっているというのはさらにコントローラブルな証。
またがった感じでは、ほぼ同じフレームのバイクであるにもかかわらず、一回り大きな車格のバイクに乗っているように感じました。
2台の違いから、各々のキャラクターに興味が深まるところです。
オフロードの楽しさへいざなう2台の個性
今回の試乗会は、最初にKLX230とKLX230Rそれぞれの乗り味をイーハトーブの森のオフロードコース内で確かめ、続いて一般公道でKLX230の乗り味をチェックするというものでした。
実をいうと、私がオフロードコースでバイクを走らせるのは実に数年ぶりのこと。
恥ずかしながら、土の上でバイクにどう乗ったら良いのかをすっかり忘れてしまっていました。
なので、本格的なオフ走行のインプレッションは大手専門誌さんにお任せすることにして、私はこの状況を逆手にとって、
「ビギナーがKLX230でオフロードデビューしたら?」
というテーマで試乗してみることにします。
「操り感」を楽しくするスリム&コンパクトなデザイン
そんなこんなでコースイン。
最初は上半身に力が入りすぎてガッチガチでしたが、乗り込んでいくうちにだんだんと体がほぐれていくのがわかりました。
これは間違いなくKLX230が持つ扱いやすさのおかげ。
デザイナーの小林さんが説明会で、
開発デザイナーの小林稔さん
「今回のKLX230/KLX230Rのデザインで一番ポイントになるのは、ロングシュラウドの採用です。」
とおしゃっていたわけですが、実際に扱ってみるとそのデザインの合理性には非常に関心させられます。
着座姿勢からスタンディング、そして前後左右へ体重移動。
KLX230の車体は非常にスリムにできていて、小林さんのおしゃる通り、
ライダーの可動域に継ぎ目がないこと、そして水平基調のスリムなデザインのおかげで、全身を使ったマシンコントロールが凄くやりやすいんです。
またシートの高さは、マシンを挟み込んで動きを抑えたり、太ももでトラクションをかけたりするのに貢献し、
『なるほど、こうやって楽しませたいんだね』とシート高の意図には感心させられました。
ライダーと息を合わせやすいエンジンが素敵
スクエアに近いロングストロークエンジンの最高出力19ps。
特性は設計を担当された城崎孝浩さんのおっしゃる通りで、低中回転域での立ち上がりが冴えています。
技術本部 第一設計部の城崎孝浩さん
こんな私もかつてはWR250Rを所有していたのでわかりますが、確かにKLX230にはフルサイズの水冷マシンほどのパワー感はありません。
ですが、「えいっ!」とパワーをかけたいときにマシンと息を合わせやすく、出過ぎたマネをしないのがいいですね。
このエンジンの魅力を一言でいうのであれば、
「掌(たなごころ)に納まる従順な特性」
ということになるでしょうか。
コントローラブルな車体と相まって、操るのがどんどん楽しくなってくるようなエンジンです。
素晴らしいと思ったのは土の上でのABSの効き方。
リアのABSにキャンセラーを持つオフ車もあ昨今ですが、安価と軽量性を重視したKLX230ではをそれ持ちません。
BOCSHと共同開発のABSはあえて介入を遅らせ、タイヤのグリップを最大限活かす方向で対応。
その狙い通り、土の上での効き方が絶妙で無理なく止まることができ、さらにリアブレーキを使ったアクションでもABSを邪魔に思うことはありませんでした。
今回の市場ではかなり助けられた場面も多かったのですが、これなら恐らくビギナーでも安心してオフロードを楽しめそうです。
KLX230は楽しさにどんどん引き込む「教え方の上手い優しい先生」
コースインの時にはガチガチだった私ですが、操り感の楽しさについつい引き込まれ、試乗後は、
「今度はもっとアグレッシブな気持ちで技を楽しみたい…」
と、ポジティブな余韻を持っていたほど。
この感覚はまさにプロジェクトリーダー(PL)の和田浩行さんが説明会の中で何度も使っておられた、
「オフロードのファンライドを提案する」
というフレーズに符合します。
KLX230/KLX230Rのプロジェクトリーダー 和田浩行さん
『あー、こういうことなんですね』と深く納得した私でした。
ツーリングもバイクの楽しみではありますが、やはり一面一面をクリアして楽しむゲームのように、バイクと一緒に夢中になって遊べるのがオフロードの醍醐味。
コンパクトな車体のおかげで、スキルのない私でも土の上での動きに早く慣れることができました。
1つ克服するたびに『ならば、次はこんな動きを試してみようかな?』という冒険心を次々とかき立ててくれるバイク。
KLX230はオフ遊びの楽しさにどんどん引き込んでくれるような、「教え方の上手な優しい先生」だと思います。
さらに奥の楽しみにいざなうKLX230R
引き続き、コース内でコンペティションモデルのKLX230Rを試してみました。
外見上はKLX230から保安部品を取り去っただけにも見えます。
しかし、KLX230RではABSが非装備であったり、専用のアルミスイングアームを採用してキャスター角やサスセッティングなどを専用にするなど、
細々とした違いが、よりハードな雰囲気を醸し出しています。
「KLX230Rの開発を先に行い、ハードな面をしっかり造りこんでそれをKLX230の落とし込んでいった。」
という和田PL。
つまり、ベースはこちらの車両にあるということですね。
925㎜のシート高にビビりながらもコースイン。
乗ってみるとやはり、このシート高のおかげで視線が若干高く、一回り大きなバイクに乗っているような感覚を覚えます。
ただ、シートはKLX230よりも若干スリムな形状。
体重移動をよりスムースに行うことができ、ハンドル幅も5㎜増し。
操作性は確実に1つ上のモノでした。
KLX230との比較で特筆的なのは、前後サスは固めなでKLX230とはかなり感触が異なること。
おかげで、車体にはかなりガッシリした感じがあり、「本当に同じフレーム?」と思うほど。
明らかにその動きには、KLX230よりもキレがあります。
また、低中速でピックアップが良いエンジンはKLX230の特性に似ていますが、バランサーを持たないことで操作に対する反応がKLX230よりもさらに俊敏かつアグレッシブ。
全体の動きがKLX230よりもさらにシャープなので、ライダーのネガな動きも正直に反映させる厳しさがあると言えるかもしれません。
そういう面で、KLX230Rであれば「1からオフを鍛え込みたい」というライダーにとっては最高の先生になってくれるでしょう。
一般道での素直さが楽しい
この後、小1時間ほどKLX230を公道で試乗。
やはりエンジンはフレンドリー
低中速を重視したエンジン。
右手の動きに従順な特性は、普段街乗りが多いライダーにとって大変有難いものですね。
高速域を考えれば、もう少し上の伸びは欲しいところかもしれません。
ですが、6足ミッションを上手くギアをつないでいけばスパッと速度を盛ることも容易。
のんびりとしたクルージングを楽しむなら、その加速性は十分だと言えるでしょう。
こだわりのABS、アスファルト上の効き味は?
エンジンの味を確かめたところで、今度はリアブレーキを思いきり踏み込みながら公道でのABSの効き味を試してみました。
「介入を遅らせてある」という説明通り、グっと踏み込んでみると「ズ・ズ・ズ…」と段階的に短くロックしながら減速。
ちょっと独特な感じですが、通常のブレーキングには癖はなく、特性を理解していればすぐに慣れるものだと思います。
マルチに遊び込める車体が魅力
車体重量は134kg。
「取り回しの重さを嫌って230という中間排気量を選択した」と開発陣が言う通り、乗り味は軽快そのもの。
多少ペースを上げてコーナーに入っても、高めなシート高のおかげでマシンの動きを抑えやすいですね。
自在感のある操作性がはっきりと判り、公道ではコーナリングもバリエーション豊富に楽しむことができました。
普段の足からオフロードまでをマルチに遊び込める楽しさ。
これならモタードも欲しい気がしてきます。(笑)
まとめ
できるだけ価格を抑えつつも全てのパーツを新造した”オールニュー”の車両。
開発陣の言う通り軽量で機能的な楽しいバイクに仕上がっているのがわかります。
やはり「手に入りやすい」というのも一つの性能。
そこにこだわりながら、オフ車の楽しみを提案してくれたKawasakiの姿勢に拍手を送りたいと思います。
KLX230R | KLX230 |
2019年10月1日発売 | 2019年10月15日発売 |
(10%税込)51万7000円 | (10%税込)49万5000円 |
取材協力;株式会社カワサキモータースジャパン