目次
いよっ、待ってました!
2019年4月2日の新聞各社の報道によると、
- ホンダ技研工業株式会社
- ヤマハ発動機株式会社
- スズキ株式会社
- 川崎重工業株式会社(報道順)
の国内二輪4社が、電動(EV)バイクの普及に向けコンソーシアム(共同協議体)を立ち上げることが明らかになりました。
既にモーターサイクルナビゲーターの中でも、バイクの電動化のあるべき姿については何度かお話してきました。
ちょうど、先日開催された東京モーターサイクルショーの中でも、Hondaが新たにEVバイク2車種を世界初公開しましたね。
中でも、発表されたBenlyエレクトリックは、近く日本郵政に順次配備される予定だそうで、電動バイクをより身近なものとして感じさせてくれることになりそうです。
また、すでにヨーロッパ各国や中国・インドなど、諸外国では、2030年ないし2040年までに内燃機のみで駆動する自動車の製造・販売を禁止することを公的に示している国が多くあります。
将来その具現化が確実視されるEV社会に向けて、今回のコンソーシアムの立ち上げは国内4メーカーにとって、ひいては日本の産業の在り方にとっても大変に意義深いものになるでしょう。
今回はこの話題を、モーターサイクルナビゲーター流に掘り下げてみたいと思います。
キーワードは「バッテリー脱着型」
今回のコンソーシアム設立はEVバイクや使われるバッテリーの規格化を目指すだけでなく、「充電設備」などの規格統一も目指しているようです。
この「充電設備の規格統一」というのはキーワードになるので、ちょっと覚えておいてくださいね。
4社はさらに、この充電設備を国際規格に昇華させ、来たるべきモビリティーのEV化の中で世界をリードする構えです。
現在のところ、2輪4輪を問わず電動車と言えば、車両に固定搭載あるいは同梱されるバッテリーに充電する形式のものが主流のようです。
しかし、この搭載固定型バッテリー車でネックとなるのは、
- 充電時間が長いこと。
- 急速充電を繰り返した場合バッテリーそのものの寿命が短くなること。
- 寿命を迎えたバッテリー交換時のコストが相当に高価であること。
などです。
こうした現在の電動車の課題を打破するものとして考えられているのが、「バッテリー脱着型EV」とそれを支えるインフラの整備。
既にアジア各国の中にはモビリティーの電動化で世界に打って出ようとしている国もあり、台湾の「KYMCO」や「gogoro」といったメーカーは、バッテリー脱着型EV2輪の分野で実績を積んでいます。
以前モーターサイクルナビゲーターの中でも、ヤマハがgogoro(ゴゴロ)とアジアで脱着バッテリー搭載のスクーターの開発で提携を結んだことはお伝えしました。
このほかホンダも、アジアでバッテリー脱着型バイクの普及と、そのインフラ整備に乗り出しています。
各社は、これまでもこうしてアジアの電動モビリティー需要を見込んで、地元企業と一緒にいわばアンダースタディーを重ねてきたわけですね。
2輪にとってアジアは巨大な市場で、メーカーにとっては生命線の一つであり、さらに強化される環境規制の中でEVバイクの発展は必須の課題。
これに向け、バッテリー脱着型EVの分野で日本が出遅れるわけにはいかず、共同で開発をさらに加速させる必要があるのです。
規格の統一を図る理由(わけ)
例えばヤマハのE-VINOが一充電で走れるのは29㎞※。(※メーカー公表値)
一個のバッテリーで駆動し、オプションのスペアバッテリー↑を載せて取り換えることで58㎞の走行を可能としています。
また、HondaのPCXエレクトリックの場合では、
このように2個のモバイルバッテリーを直列つなぎしているのが特長で、安定したパワフルな走りが可能なのだそうです。
さらに、PCXエレクトリックの場合は、
コンセントから直接の給電も可能ですが、日本では駐輪場にコンセントがない場合がほとんど。
なので当然、バッテリーを取り外してお部屋で充電できるのはありがたいですよね。
バッテリーの形状や出力形態には違いがありますが、この2台で共通しているのは、脱着式バッテリーを搭載しているということ。
しかし、PCXエレクトリックにしても、一充電での航続可能距離は41㎞※。(※メーカー公表値)
ヤマハが提携するゴゴロ社のバッテリーステーション
上の写真の様のように、日本各地に充電済みのバッテリーと交換できるステーションが配置されたら、便利だと思いませんか?
恐らく高価なバッテリーの寿命を気にすることもないですから、維持費も安くなるのではないでしょう。
ホンダもヤマハも、ゆくゆくこうしたシステムが構築されることを視野に入れて、脱着式バッテリーを採用しているのだと思います。
しかし、規格の違う複数のバッテリーができてしまうのは困りもの。
このままだと、かつてベーターとVHSという複数の規格が存在したビデオデッキみたいになってしまうかもしれません。
そこで、こうした充電設備とバッテリーの規格を統一させる必要があるわけなんですね。
また、共同で基礎開発を進めることで、各社が各々に1から研究開発するよりも確実にコストを削減できると言います。
なおかつそれを世界規格化するというのは、これまでに引き続き国内4社がグローバルリーダーとして、世界のバイクシーンをけん引する力にもなるでしょう。
将来のEVバイクは退屈なモノじゃない
世界のEVバイクを見れば、既に世界メジャーメーカーがいろいろな形でEV車を発売しています。
BMWモトラッドは「C evolution」というEVスクーターを2017年5月から発売しています。
また、ハレーダビットソンも「ライブワイヤー」という電動ハーレーを近く発売予定で、既に予約をスタートさせたことは当サイトの中でもお伝えしました。
さらに、先述のKYMCOは、IMU+6速ミッション+音響発生装置付きの電動スーパースポーツ「SUPER NEX」を発表。
このアイディアは、電動車の新たな可能性を見せてくれました。
また、開幕シーズンを前に火災で全台数焼失という非常に残念なことになってしまいましたが、
今年から開催が予定されていたイタリアに本拠を置く発送電大手企業「enel(エネル)社」による世界選手権「MotoE」。
これが復旧・開催されれば、今後のEVバイクの発展に大きな前進をもたらすのは間違いないでしょう。
なので、「EVになるとバイクは退屈なモノになる」というのは既に一昔前の古い予測。
近年の国際モーターショーでも見えてきているように、EVバイクはその利を活かしながら非常に個性豊かなものになるのではないかと思います。
ただ、上に挙げたEVバイクたちで共通するのは
- どれも脱着式バッテリーを採用していないということ。
- 日本にある様な小型EV2輪車ではなく、大型車をEV化していること。
この2点は注目です。
ですから、今こそ日本の技術で脱着式バッテリーを採用したミドルクラスのバイクをなる早くで登場させようとすることには、世界的なアドバンテージを得るためにも非常に大きな意義があるのです。
まとめ
初期のころよりはだいぶ発展したものの、現状、日本の電動バイクは、まだまだ「よちよち歩き」の段階なのかもしれません。
しかしそうだからと言って、EVを悲観することは全くないと思います。
例えば、私も10年前まで、当時「スマートフォン」と聞いてもピンと来る人は少なかったですし、ガラケーの方が主流でしたよね。
でも当時、スマホの方が主流になって、Eコマースが世の中を動かすようになるなんて、いったいどれほどの人が考えていたでしょうか?
世の中の常識は、何かをきっかけに、今まで考えもしなかった方向にあるときがらりと変わるものです。
同じように、この脱着型バッテリーのインフラ整備・拡大がEVをモビリティーを大きく発展させることに、もはや疑いの余地はありません。
今は確かに考えにくい姿ですが、きっと、脱着型バッテリーのインフラが整備されて以降の内燃機車は、今のガラケーのような存在になるかもしれませんね。
今回の国内4社によるコンソーシアムの立ち上げは、現在のEV車の欠点を克服させ、価格をよりリーズナブルなものにして、さらに具体的なEVバイクの世界を見せてくれることになるでしょう。
私個人としては、KYMCOのSuper NEXのように6速ミッションを持った日本製EVの登場を期待しています。
EVでもやはり日本の技術がアドバンテージをとって、世界をけん引していってほしいですね。
モーターサイクルナビゲーターでは今後も引き続きこの情報の進展には注意深く耳を澄ませ、先進的な情報があれば、すぐにお伝えしたいと思います。
令和の時代のEVバイク。
その発展に期待しましょう!
~2019年4月4日追記~
今回取り上げました4社コンソーシアム設立について、4月4日正式発表がありました。