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立ちごけは忘れたころにやってくる
先日、私は50歳の誕生日に、MT-10SPを納車しました。
納車引き取り時のMT-10SP ↑
納車したばかりの大切なバイク、絶対に傷つけたくはありません。
しかし、そういう時に限ってやっ来るんですよねぇ、「立ちごけ」という奴は。
実はこの2週間後、やらかしてしまいました。
「えっ、立ちごけなんて、初心者じゃあるまいしぃ」
そうですよねぇ。
実は私もそう思っていました、コケるまでは…。
私は18歳の時からバイクに乗り始めて32年。
若いころはオンオフを問わずサーキット走行も経験し、
近年も柏秀樹先生直々のライディングレッスンを複数回受講。
それなりに備えは万全のつもりでいたのですが、それでもやってしまったんです。(柏先生ゴメンナサイ!)
執筆動機になった私の立ちごけ
まぁ笑って見てやってください。私の立ちごけシーンのノーカット版。(ちなみに、ドラレコの日時は狂っています)
ここはよくある日曜日のコンビニの駐輪場。
クルマの列の奥の壁際にバイクを止めるようになっていて、そこから出ようとしたところです。
バイクを起こして、横の車に対して90度くらいの向きにいったんバイクを置いて乗り込み、そこからUターンの要領でちょっと狭めなスペースからの脱出を図ります。
しかし、初速から舵角を付けてみたものの、思ったよりも舵角が足りず…、
『あれ、まさか出られないぃ?』
と思った瞬間!
あっけなく立ちごけ。
あわてて引き起こすのですが、茫然自失。
どこか凹んだり曲がったりしていることも、ゆっくりと覚悟をして見てみると…。
幸い、機能に影響するような破損はあえりませんでしたが、上記3か所にいやぁ~な傷をつくってしまいました。
「えっ、何だったの今の?」
「うわぁこの傷どうしよう?」
もう頭の中は騒然。
自分でも不思議なくらい気持ちを落ち着かせるのに時間がかかりました。
立ちごけひとり反省会
何年もバイクに乗ってきて、新車で立ちごけ、バイクの物書きなのに…。
やはりショックが大きいので、ひとり大反省会です。
原因その1;「乗れてるイメージ」っていつのもの?
MT-10SPはネイキットバイクにしてはハンドル切れ角の少くなめなのですが。
これはもちろん買う以前からの了解事項。
多分あのとき、
『こんなちょっとした90°ターン、小手先でひょいとできるさ…、』
と思い込んでいた自分がいたような気も無きにしも非ず。
昔の「乗れてるイメージ」に固執した結果とも言えなくはないですね。
バイク歴の長いライダーなら恐らく、自分が「乗れてる」と思っていた時のイメージってあると思います。
恐ろしいことですが、『こないださぁ』の「こないだ」が、実は10年前の記憶だったりすることも、40過ぎると多くなってきますよね。
私がまさにそうなのですが、その10年くらいの間に仕事が忙しくなったり、結婚して子どもが生まれてライフステージが変わったり。
「バイクにいつか乗るぞ」というその「いつか」ですら3日に一度から毎週末になり、ひどい時には半月に一度…?
しかし、その間も目指すべき「乗れてる自分のイメージ」だけは新鮮に保たれていたりするわけですよ。
なんだか、毎日気ぜわしく過ごしていると、知らないうちに見えないタイムマシンに乗っているみたいになるんですね。
原因その2;ライディングフォームが崩れきっていた
走行中に、ふとその時の体の力の入れ具合に意識を向けてみると、結構ヤバいことになっていることに気づきました。
この時の乗車姿勢を見つめ直すと…。
下半身のホールドはほぼほぼゼロ。
地面に垂直にシートに乗るべき仙骨(腰骨)はぐにゃっと前倒して、
背骨は極端に反り返り、胸が突き出る形に。
おまけに上体は力が入りまくり、腕はまっすぐでパツンパツン。
改めて気づいたときは、ビビりましたね。
どうしてこんな状態になっているのか、落ち着いて考えてみると思い当たるのは…
- 集中力の低下。
- 身体を支える筋力の衰え。
「加齢」というのもそうなんですが、私の場合は近年、身体を動かす機会が激減したことによる筋力の低下も一因な様です。
責任世代のライダーの皆さん方で、同じようなことに思い当たる方はいませんか?
原因その3;バイクと「会話」していなかった
恥ずかしながら今回の立ちごけのことを、いつもお世話になっているショップのご主人に打ち明けたところ…。
ご主人はその原因をこう分析してくれました。
いや、さすが、とても含蓄のあるご回答。
実は、立ちごけたその日は納車2週間目でしたが、まともに走ったのはこれが3回目。
一日中パソコン画面とにらめっこの日々を送っており、「一週間ぶりに外に出た」ということも珍しくはない私です。
ご多分に漏れず、立ちごける一カ月前から缶詰になって、文字通り死んだ魚の目をしていました。
いつも通り走っているつもり、でも安全運転ではなく漫然運転。
ご主人のおかげで、バイクと会話するという意味が本当によくわかりました。
初心に戻ってみよう
「もうバイクを買うのは最後かなぁ」と思って、今まであこがれていた凄いバイクを思いきって「あがりバイク」として買う。
最近身の回りでよく聞く話、って人事のように言っていますが、何を隠そう私もそのうちの一人です。
昨年(2018年)4月に自動車工業会がまとめた「二輪車市場動向調査」によると、バイク人口の平均年齢は52.7歳。
バイクから離れている時間が多くなって、たまにバイクに乗ったときに「あれ?」ということに遭遇することも増えてくるかもしれません。
50歳の私の例に、「あー、これあるある」と思っていただけた方も多いかもしれませんね。
かといって「潮時か?…」等と卑屈になる必要は全然ありませんよ。
建設的に考えれば、むしろその時は自分のライディングスタイルを見直すチャンスです!
例えばギターやピアノも次第に音が狂ってチューニングが必要になるように、長年バイクに乗った人にも基礎力のチューニングが必要なんだと思います。
失われていることに謙虚になり、それを着実にカバーする方法を考えてみましょう。
基本的な身体能力を維持、まずは歩くことから
基本的な体の機能を高めることは、ライディングに必要な「認知」・「判断」・「操作」をスムースなものにしていくために大切なことです。
私事ではありますが、最近同年代の我が妻が肩の故障に悩み、針治療を受けるようになりました。
肩の治療にもかかわらず、ふくらはぎに針を打たれるので、先生に「なぜふくらはぎに?」と質問したところ、
と、とにかく普段から良く歩くことを勧められたそうです。
妻からこの話を聞きましたが、それはまるで私のことを言われているようでした。
確かに歩くことを気を付けてみると、頭がすっきりして景色を捉えやすくなりましたね。
今後も楽しくバイクを動かしていくために、生活習慣を見直すというのも、この歳になれば今まで上に大切なのかもしれません。
基礎を学ぶ楽しさを知る
柏先生の御著書、「IQライディング」(モーターマガジン社)を読んでいると、
「IQライディング」(モーターマガジン社)p24より。
御歳65歳の先生がMT-10でフルロックターンをお決めになっている!(しかもニッコリ余裕の笑顔!!)
これを見たら、50歳の私なんか鼻たれ小僧ですよ。
今回は、あまりに崩れてしまったライディングフォームの基礎を再点検することにします。
以前、柏秀樹先生に教わったのは、
- 下半身はくるぶしでマシンをホールドし、ブレーキング時など、ニーグリップは必要な時だけにした方が継続的な運転では疲れにくい。
- 基本的に体幹を意識し、背骨は「S」の字を描くようにすると、ショックを和らげるので疲れにくい上、疲れていてもコントロールもしやすい。
- 上体には力を入れず、腕はやんわりと丸く、手はハンドルに対してややを斜めにして握るとバイクが安定し、バイクの自然な動きを阻害しない。
※解説のため素手で撮影しています。
まだまだいろいろあるのですが、最低限これを忠実に守って練習してみました。
その結果、
本人の中では、柏先生の写真と同じのつもり…
いやぁ、全く先生には程遠い…。
ですが、状態の上体の力を抜くことができたので、以前よりマシンの動きが読みやすく、安心感が増した感はありますね。
バイクの動きを探り、バイクと「会話」も少々できていたと思います。
でもこれじゃぁまだまだ足りませんね。
ライディングレッスンを受けるという近道
今回、柏秀樹先生にもこの件をご相談させていただき、執筆にもいろいろアドバイスをいただきました。
先生のお話では…、
とのことでした。
KRS(柏秀樹ライディングスクール)、講習レパートリーは教習所内のレッスンだけでなく、ツーリングをしながら楽しく基礎を学べる講座やサーキットレッスンまで様々。
私がおすすめなは、リターンライダーも気軽にツーリングを前提とした基礎を学べる「イブニングレッスン」という講座です。
土曜の夜に教習車で参加でき、参加費もリーズナブルなので、ご興味のある方は是非ご参加ください。
私も先生のところで基礎を磨きなおさねば…。
まとめ
立ちごけは、状況によっていろいろなタイプがあるので、一概に今回の例が当てはまらない場合もあると思います。
それでも、今回は私が喫してしまった立ちごけから学べるところをいろいろ考えてみました。
どんなに歳を取っていったとしても、マシンがどんなに変わったとしても、しっかり乗りこなせる自分でありたい。
それは多くの中高年ライダーの願いでもあるでしょう。
私にとって今回の立ちごけは、率直に残念でしたが、
基礎力の失調に気づけた点では、良い機会になりました。
皆さんも今一度ご自分のライディングを点検してみてはいかがでしょうか?