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ピンクナンバーって楽しいの?
最近、私の周りのバイク乗り達が、原付2種のMT車を手に入れて楽しんでいます。
俗にいうピンクナンバーですね。
彼らはR1であったり、CBR1000RRであったりと、スーパースポーツバイクのオーナーで、あちこちツーリングにもいく仲なのですが、最近はすっかりご無沙汰。
どうしているのかと思いきや、大きなバイクをほっぽらかして、誘い合わせてピンクナンバーツーリングをしているようです。
なんでも、大型バイクでは通り過ぎてしまっていた風景も、ピンクナンバーで走ると新鮮に見えるのだとか。
置いてきぼりにされたジェラシー?
というより、素直に興味がわいたので、私もモーターサイクルジャーナリストとしての職権を行使して、ピンクナンバーの魅力を探ってみることにしました。
すぐに仲良くなれるクロスカブ110
今回は東京・青山のホンダ本社からクロスカブ110の広報車をお借りしています。
私にとってカブと言えば、まだ幼少のころに印刷工房を営む父が、紙をどっさり運んで帰ってきた記憶とともに思い出される車両。
要するに、カブには昭和のノスタルジックな印象が私にはあるんですね。
しかし、ホンダ本社を出発するとそこは平成末期の青山通り。
昨年登場のクロスカブ110の外観は、その後走り抜ける原宿や渋谷といった世界有数のおしゃれ発信地の風景にも違和感なく馴染んでいきました。
しかし、自分自身でカブを運転したのはかれこれ20年以上前、務めていたバイク店で整備の感性を見るために少し試乗して以来。
なので初めは信号待ちでシフトを戻し忘れているのに気づいて慌てたり…。
その上、『カブならエンジンブレーキは極端にならないように気を付けないと…』とも思っていたのですが、
昨年刷新されたカブ110と同じエンジンは、流石に21世紀のカブ。
ギアのつながり方が非常に優秀ですね。
60㎞/hまで早めに4速まで上げれば穏やかに走ることができ、1速づつを長めに伸ばして走ればしっかりと俊足性を感じられる。
その中でのシフトチェンジは非常にスムースです。
逆に減速するときは、少しリアブレーキで抑えつつ、踏み込んだかかとをゆっくりと離していけば、さほど大きなショックを感じることなくエンジンブレーキを使うこともできる。
そんなコツを一つ一つ理解するのを楽しみながら走っていると、あたりは既に調布市の味スタ前。
この後も信号が変わるたびに刻むギアのリズムは愉しく、クロスカブ110の軽快な加速感もまた心を和ませてくれました。
強いてこの豊かな乗り味を一言で表すとすれば、「軽やか」の一語。
バイクが乗り手を急かしてくることもなく、アクセルをぐっと開ければ従順に前に進もうとする。
これはまるで、カブと会話を愉しむような、とても楽しい気分です。
この時は急くこともなく、ゆっくりと走らせていたつもりでした。
しかし、クロスカブ110はいつの間にか私を多摩川を渡らせていて、自宅まであと10分程度というところまで連れてきています。
実はこの日、おやつのころには帰宅する小学生の娘が家から登校する際、
「パパは今日、ホンダさんから原付に乗って帰ってくるので遅くなる、カギをもって自分で家に入ってね。」
そう言って娘を見送っていました。
いつも大型車の撮影が多く、撮影日の悪天候に備えた予備撮影を済ませ、首都高で帰ってくるので、今回は通常よりも遅い帰宅になると考え、そのように伝えていたんです。
しかし実際は、途中神宮外苑で予備撮影をしたにもかかわらず、お昼前には多摩の自宅に到着。
初めは「カブだから」と俊足性をあまり期待していなかったのですが、予想に反して移動にかかった時間はわずかに約1時間半。
この間は本当に時間を感じることなく「あっ」という間で、とても充実感のある時間でした。
本来この移動は、この後に行うレビューのための回送に過ぎないのですが、見慣れた街並みの中を走るのがこんなにも新鮮に感じられたクロスカブ110の走り。
不覚にも、私はこの時点でかなりクロスカブ110に魅了されてしまいました。
クロスカブで山へお散歩に
青山のホンダ本社から自宅までの回送だけでも十分楽しめたクロスカブ110。
翌日は、予定していた通り道志みちを抜けて、私がいつもバイク散歩の行き先にしている「道の駅どうし」へ向けて走り出しました。
山登りで車人一体感を味わう
私にとって道志みちは、もう何十年と走って馴染んだ道。
風景も相当見慣れているわけですが、そこはやはりクロスカブ110。
小気味よく刻む4速シフトと乗り手を決して急かさないキャラクターがのどかな風景をより穏やかなものに見せてくれています。
道志みちも、相模原市を抜けて山梨に入ると、アップダウンの多いワインディングが続きます。
流石にここは登坂の力で若干の劣りを感じ、「快適」という言葉で量るなら、やはりいつも乗り慣れた大型バイクの方に分があるものです。
ただ、坂道の斜度に合わせてガシャガシャとギアの上下をする手間にはわずらわしさよりも、むしろ「一生懸命カブを走らせている」という面白さが自然と喚起されていきます。
何というかこれは、大型車のそれとはまた違う「車人一体」の感覚。
ライダーが命じることに、非力ながらも健気に従おうとするカブの推力は、何とかわいらしく感じることでしょうか。
間違えてはいけないのはこれが広報車で、次の週にはホンダさんにお返ししなくてはいけない車両だということ。
なのにそれが惜しいと思うほど、この可愛らしさに強く惚れてしまいました。
鋭利な速さは無いものの、いつもとはそう変わらない所要時間で目的地である「道の駅どうし」に到着。
私にとっては「いつもの場所」ながら、クロスカブ110はここまでの道程を、これまでとは違った新鮮な感覚で味わせてくれました。
この「道の駅どうし」では、別取材のためにシートにposidriveの「バイク座シートDr.モペット」を装着しての走行。
この商品の効能については上記記事をご覧頂きたいのですが、ここまで味わってきたクロスカブ110の走りを非常に上品なものに変えてくれる素敵な緩衝シートです。
山の下りにはまた別の表情を持つクロスカブ110の走り
その後は、このバイク座シートDr.モペットの撮影のために山中湖に向かいました。
しかし、当日はあいにく湖岸が雲に覆われ、富士山も見えなくなってしまったので、やむなくそのまま引き返しました。
自宅までの距離を伸ばしたので、『往路で味わった愉しさを長く味わえる』と思っていましたが、なんと復路はまた別の楽しさが待っていたのです。
山を下りていくクロスカブ110。
もちろん、速いと言ってもスポーツバイクにかなう由もありませんが…。
実はワインディングの下りでは、意外なほどの速さを感じました。
しかしカブというだけあって、こうしたワインディングでは車体にしっかりとした剛性感や安定感を感じます。
それ以上に、要所要所コーナーのポイントを押さえて走れば、その一つ一つをスポーティーに裁ける楽しさがあることには驚きました。
そんなクロスカブ110の走りを楽しみながら、あっという間の下山。
やはり、見慣れた近所からちょっと遠くの景色まで、ピンクナンバーは新鮮な風景に見せてくれるのが楽しいですね。
カブならAT免許でOK
実は今回、「ピンクナンバーツーリング」の取材をするにあたって、グロムやCB125R、あるいはトリシティーなどを使用車両の候補をあれこれ考えていました。
しかし、こうしてカブ110に出会えたことは、非常にラッキーなことであったと思っています。
世界で愛され続けているカブシリーズの、さらにタフさを盛ったクロスカブ110。
このクラスでやはり遠心クラッチというのは、カブ以外に無二なものですから、非常に個性的であることは間違いありませんね。
昨年、これまで最短3日かかっていたAT限定小型普通自動二輪の免許を、自動車免許を持っていれば最短2日でとれるように制度が緩和されました。
特にカブの場合、クラッチ操作がないため、ミッションの楽しさをしっかりと持っていながら、AT免許で乗ることができるんです。
なので、今後カブの魅力はますます大きく拡がっていくいのではないかと思います。
皆さんもお近くの試乗車がありましたら、ピンクナンバー、そして遊び心いっぱいのクロスカブ110の走りをぜひご体感ください。
また、これまで通勤用と割り切ってピンクナンバーの車両に乗っていた皆さん。
少し遠出をして、「ピンクナンバーツーリング」で気分を変えて楽しんでみませんか?
ホンダクロスカブ110諸元
車名・型式 | ホンダ・2BJ-JA45 | ||
---|---|---|---|
全長(mm) | 1,935 | ||
全幅(mm) | 795 | ||
全高(mm) | 1,090 | ||
軸距(mm) | 1,230 | ||
最低地上高(mm) | 157 | ||
シート高(mm) | 784 | ||
車両重量(kg) | 106 | ||
乗車定員(人) | 2 | ||
燃料消費率 (km/L) |
国土交通省届出値: 定地燃費値 (km/h) |
61.0(60) 〈2名乗車時〉 |
|
WMTCモード値 (クラス) |
66.7(クラス 1) 〈1名乗車時〉 |
||
最小回転半径(m) | 2.0 | ||
エンジン型式 | JA10E | ||
エンジン種類 | 空冷4ストローク OHC単気筒 |
||
総排気量(cm³) | 109 | ||
内径×行程(mm) | 50.0×55.6 | ||
圧縮比 | 9.0 | ||
最高出力(kW[PS]/rpm) | 5.9[8.0]/7,500 | ||
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 8.5[0.87]/5,500 | ||
点火装置形式 | フルトランジスタ式 バッテリー点火 |
||
潤滑方式 | 圧送飛沫併用式 | ||
燃料タンク容量(L) | 4.3 | ||
クラッチ形式 | 湿式多板 ダイヤフラム スプリング式 |
||
変速機形式 | 常時噛合式4段 リターン |
||
変速比 | 1速 | 2.615 | |
2速 | 1.555 | ||
3速 | 1.136 | ||
4速 | 0.916 | ||
減速比(1次/2次) | 4.058/2.642 | ||
キャスター角(度) | 27゜00′ | ||
トレール量(mm) | 78 | ||
タイヤ | 前 | 80/90-17M/C 44P | |
後 | 80/90-17M/C 44P | ||
フレーム形式 | バックボーン |
車両協力;株式会社ホンダモーターサイクルジャパン
諸元参照元;本田技研工業株式会社/クロスカブ/スペック