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おかえり!セロー
ヤマハ発動機は2018年7月25日、新型セロー250を8月31日に発売すると発表しました。
昨年、生産を終了を発表したセロー250。
日常の足はもちろん、ツーリングから果ては林道走行まで幅広く付き合えるタフでフレンドリーなキャラクターはセローならではのもの。
1985年の初代発売から今年で33年目を迎えるロングセラーだけに、後継車の発売を望む声は大きく、ヤマハHP上のセロー製品紹介ページにはそれに応えるように、
というクレジットがついていました。
製造を中止の理由は、厳しくなった環境規制に適合できなくなったため。
このクレジットを見て「新型が出たら買おう!」と首を長くして待っていた人も多いことでしょう。
「焦らさずに早く見せろ!」と言う方もおいでですよね。
ではまず、その姿をしっかりと見ていただこうと思います。
いかがでしょうか?
これが新型セロー250です。
「おい、どこも変わってないじゃないか、冗談ははいいから早く新型を見せろ!」
なんて言わないでくださいね、これが新型なんです。
しかし、ガッカリする人もそうはいないでしょう。
セローはセローでいてくれることを望まれていたのですから。
むしろ、これまでとほとんど変わらない姿で帰ってきてくれたセローには、「おかえり!」と言ってあげたいですね。
噂は良い方向に裏切られた
キャブ車なら、エンジンのかけ初めに燃焼室のガスを濃くするためにチョークを引いていたものですが、FI全盛の今ではそれも自動になりましたね。
しかし新しい環境規制では、このかけ初めのガスの濃さがこれまで通りだとNGとなり、さらにはこれまでガソリンタンク内の揮発ガスを大気放出していたのもNGになったのです。
揮発ガスへの対応は別としても、前者への対応は空冷という構造上難しいのではないかと言われています。
このため、一部の予想としては水冷化が噂されたこともあり、「セローのセローらしさが失われるのでは?」と心配されてきました。
モーターサイクルナビゲーターでは、インドで発売されているFZ250に搭載されていた、セローエンジンをベースの環境エンジン「BLUECORE」に注目。
「セローの環境適合もこのBLUECOREが本命なのでは?」
という予測をしていました。
この記事の中では発売を来年2月とし、BLUECOREを搭載したうえで「WR250と統合してホンダのCRF250Lのような姿になるのではないか?」
と大胆な予想をした筆者。
さらに、ブラジルで発売されているセローエンジンのテネレ250が、かなり完成度の高い車種となっていることから、「日本でこれがセローを名乗る?」
という噂も一部にあり、「さすがにそれはないだろう」という記事をちょうど校了させたところに新型発売が正式アナウンスされたわけです。
確かにテネレ250、これはこれで魅力的でもありますが、やっぱりセローはセロー。
「きっと、ずっとSEROWです。」というキャッチコピーは秀逸だと思います。
散々噂話をしておいてなんですが、今回の新型発売は「予想を良い方向に裏切ってくれたな」という印象を受けます。
変えないという進化
エンジンの外見上も、うわさされたBLUECOREエンジンであれば、オイルクーラーやそれにつながる配管類があるはず。
↑インドヤマハのFZ250のエンジン回り
ところが新型セロー250にはそれがありません。
こうして右側から見る景色としては全く今まで通りと言ってよいでしょう。
しかしに左側から見てみると、
ガソリンタンク内の揮発ガスの浄化装置(キャニスター)が追加されているのがわかります。
とりあえず現在は、ヤマハさんのHPの写真を眺める以外にないわけですが、エンジンの変更点は外見上この一点しかないように見えますね。
と言うわけで、新旧セローの諸元を比較して内容がどう変わったのかを見ていきたいと思います。
2016年セロー250(DG17J) | 新型セロー 250(DG31J) | |
全長/全幅/全高 | 2,100mm/805mm/1,160mm | 2,100mm/805mm/1,160mm |
シート高 | 830mm | 830mm |
軸間距離 | 1,360mm | 1,360mm |
トレール | 26°40′/ 105mm | 26°40′/ 105mm |
車両重量 | 130kg | 133kg |
原動機種類 | 空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ | 空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ |
気筒数配列 | 単気筒 | 単気筒 |
総排気量 | 249cm3 | 249cm3 |
内径×行程 | 74.0mm×58.0mm | 74.0mm×58.0mm |
圧縮比 | 9.5:1 | 9.7:1 |
最高出力 | 14kW(18PS)/7,500r/min | 14kW(20PS)/7,500r/min |
最大トルク | 18N・m(1.9kgf・m)/6,500r/min | 20N・m(2.1kgf・m)/6,000r/min |
燃料タンク容量 | 9.6L(無鉛レギュラーガソリン指定) | 9.3L(無鉛レギュラーガソリン指定) |
燃料消費率 | 40.0km/L(60km/h)2名乗車時 | 48.4km/L(60km/h) 2名乗車時 |
エンジンオイル容量 | 1.40L | 1.40L |
タイヤサイズ (前/後) |
2.75-21 45P(チューブタイプ) /120/80-18M/C 62P(チューブレス) |
2.75-21 45P(チューブタイプ) /120/80-18M/C 62P(チューブレス) |
さて、いかがでしょうか。
車体の大きさそのものは変更がなく、旧来のまま受け継がれた感じになっていますね。
ただ重量は3㎏増。
これは環境対応への代償と言うか、仕方のない部分。ですが恐らく実車に乗ってみてそれを気にする人も少ないでしょう。
エンジンに関しては興味深い変更がありますね。
ボアストロークは全く同じであるのに対して、圧縮比が若干上がっています。
恐らくヘッド形状に変更があったか、あるいはインジェクションの設定を変えるなどして燃焼室内の充てん率を高める工夫がされているものと思います。
この効果として最高出力は2馬力アップの20ps/7,500rpm、そして最大トルクについては2kgf・m増し。
その発生回転数はこれまでより500rpm低い6,000rpmと低くなっています。
これから考えると、恐らく新型セロー250は、低速での使いやすさが増し、そこから伸びやかに加速していくような気持ちよいバイクになっているのではないでしょうか。
さらに、面白いことに燃費が約8㎞も上がったこと。
燃料タンク自体はキャニスターの影響か300㏄程容量が減少しているものの、セローのキャラクターを考えれば航続距離が多少でも上がるのは非常ににありがたい話ですよね。
多くの既にお話したように、多くのメディアの予想記事はBLUECOREエンジンの搭載を予測していたわけです。
このBLUECOREはヤマハが環境性能を考慮して開発した高効率エンジンのこと。
徹底した抵抗ロスの排除と高圧縮化によるエンジンの仕事率アップで、燃費を向上させるのがBLUECOREの基本となります。
高圧縮化に伴う熱の問題を解決するためにFZ250にはオイルクーラーがついているのですが、この辺りは先述の通りの外観となっていますね。
今回の新型でヤマハさんは、このエンジンがBLUECOREだは言っていません。
しかし、諸元を比較すると新型はBLUECOREっぽいエンジンだということがわかりますよね。
これは、なかなか面白い内容だと思います。
いずれにしても、これまでのエンジンを母体に内容をここまで磨き上げたヤマハさん。
SR400がFIになったときも驚きましたが、今回の新型セローも、「変えないという進化」を魔法のようにを見せてくれたような気がします。
細かい変更点はここ
スタイリングには大きな変化はないものの、よく見ていただくと、テール回りがとんがっているのがわかります。
恐らく外見で旧型と区別するには、先述のキャニスターと、このテール部分を見るのが手っ取り早いでしょう。
テールライトはセローの定番改造だったXT250のテールライトがはじめから装着されています。
やはりこの方がすっきりしてカッコいいですね。
セローのセローらしさ
「オフロードバイク」と単に大きなくくり方をしてしまうと忘れてしまいそうですが、セローはマウンテントレールバイクです。
例えば、タンデムシートの後ろに位置するハンドルスタンディング。
これをタンデムグリップや荷掛フックだと思っている人も少なくないようですね。
しかし、これは林道走行などで滑落した際、ここにロープをかけて谷底から引き上げるための救出用フック。
ライト下にある「フラッシャーガード」と呼ばれるフックも同じ目的。
セローは初代からずっと付いている装備で、今回の新型にもちゃんと受け継がれました。
「滑落」・「転倒」までを想定したバイク。
恐らくこのクラスでそんなバイクは他にないのではないでしょう。
つまり、この装備がなければ、もはやそれはセローではないのです。
「セローでないと行けない。」
そんな秘境のさらに先にある景色を追い求める、「ジャパニーズ・アドベンチャーバイク」。
これがまさにセローの真骨頂だと言えますね。
カラバリは3色、コスパも半端なし
新型セローのカラーバリエーションは3色。
パープリッシュホワイトソリッド1(ホワイト/グリーン)
パープリッシュホワイトソリッド1(ホワイト/オレンジ)
パープリッシュホワイトソリッド1(ホワイト/ブルー)
これまでも、セローはイヤーモデルを出し続けていて、「お、カッコいいなぁ」と思っても色が変わってしまうので、この3色に惚れたら今が買いでしょう。
値段は564,840円 [消費税8%含む](本体価格 523,000円)。
この価格にしてセローと暮らす人生はプライスレス、まさに「コスパ半端なし」ですね。
また各種オプションを装備してツーリング性能を高めた、「アクセサリーパッケージ TOURING SEROW」も前モデルに引き続き発売されます。
こちらは、619,920円 [消費税8%含む](本体価格 574,000円)。
大きなキャリアに夢を目いっぱい載せて、どこまでも駆けて行きたいですね。
セローに会おう!セローで会おう!
ロングセラーモデルであるセローは、老若男女を問わず非常に幅広いファンを持つバイクです。
モーターサイクルジャーナリストの柏秀樹先生もそのお一人。
柏先生はこの写真のアニバーサリーモデルの他に、もう一台セローをお持ちです。
昨年筆者は先生のお招きで、先生主催のセローミーティングに参加させていただきました。
オフロードの走行講習をみっちり受けさせていただいたわけですが、目から鱗。
おかげで普段の走りも、しっかり変わりました。
何よりこうして集まった方々から、いろいろなセロー話を聞くことができたのは大きな収穫。
初代セローの開発に携わられた、元ヤマハ社員の牧野浩さんもご自身のセローでおいでになっていましたから、そこで伺ったお話というのは生涯の宝になりました。
元ヤマハ発動機(株)MC本部第2事業部主幹 牧野 浩氏(左)
そんなセローミーティング、今年はダートスポーツ誌でおなじみの造形社さんが9月28日~29の2日間、山梨県にある朝霧高原イーハトーブの森で開催する予定です。
セローオーナはもちろん、セローに興味のある方なら参加OKというイベント。
目玉は、柏先生のオフトレ講習。(一度は受講されておくことを強く推奨します!)
そして新型セローのお披露目や試乗会なども予定されているので、これは目が離せませんね。
会場は広く、キャンプもできるので、家族で行くのもいいでしょう。
詳しくは造形社さんのセロー特設サイトでチェックしてください。(一番下にスクロールすると案内があります。)
新しいセローを、見て・触れて・乗ってその本領を体験し、様々なセローライダーと情報交換をされてみてはいかがでしょうか?
車両写真参照元;ヤマハ発動機(株)