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- 2017年の東京モーターショーでコンセプトモデルが公開されて間もない、EICMAで早くもその市販車として発表されたCB1000R。
早くも2018年3月9日に発売され、SNS上には…
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- 「これは(心に)刺さるカッコ良さだ」
- 「長年他メーカーをひいきにしているが、HONDA車だけど、このバイクなら(購入を)考えたい」
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といった、CB1000Rの魅力に身を乗り出すような声が見られます。
コンセプトである「ネオスポーツカフェ」という言葉からも、その乗り味に想像を掻き立てられるところですね。
最近近隣のホンダドリーム店でも実車を見かけるようになり、一層の興味をそそられます。
そんな中筆者は、去る4月8日にホテルメルパルク横浜で行われた「Honda] Dream Festa 一般公道試乗会」に参加させていただき、このCB1000Rに試乗する機会を得ました。
うららかな新緑の港町が思わず振り向く「ネオスポーツカフェ」。
今回はその「淹れたて」の乗り味をお伝えしたいと思います。
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目次
美しさとたくましさ
場所は港街の観光名所として知られる山下公園の側。
ホテル前に整然と並べられたCB1000Rに、街ゆく人々が思わず歩調を緩めていました。
やはり自然光の下で光を放つCB1000Rの質感は、ライダーならずとも引き付けられるものがあるようです。
恐らく一番CB1000Rを印象付けるのは、美しいタンクなのではないでしょうか。
この部分は、カタログなどで見るよりも、はるかにコンパクトな印象です。
磨かれたアルミの質感とともに光沢をたたえながら、奥行きのある影をまとうシャープなラインの美しいいタンク。
これには思わず振り向いて「鑑賞」したくなる気持ちがよくわかります。
前から見てみると、
円形のアイコニックライトの中央には「HONDA」と刻まれたLEDライトのライン。
この部分がバイクの新しさを印象付けていますね。
そして、太いフロントフォークと大きなラジエーターがたくましさを醸し出しています。
また、片持ちスイングアームに取り付けられたフェンダーは、リアタイヤにどっしりとしたボリュームを与え、
テールがコンパクトに絞り込まれている分、リアビュー全体にかなりの迫力を感じます。
美しいタンクのデザインとリアビューが、CB1000Rに視線を引き付ける個性的な要素なのではないでしょうか。
他にもリア周りで特に筆者の目に留まったのはこの部分。
黒・赤いずれのボディーカラーでも、シートには赤い糸でステッチされたラインがあります。
写真では伝わりにくい点ですが、自然光の下で見るこの赤いステッチはとてもきれいで、非常に効果的なアクセントになっています。
全体を見つめなおしすと、メインフレームを表に見せない車体構成。
これがCB1000Rのエンジンを大きく見せつつ、タンク回りのコンパクトさを際立たせる要因だとわかります。
各部の造り込みによって洗練された美しさと、迫力のある力強さとが、一台に融合しているCB1000R。
これはかなりの造形美ですね。
宮城光さんによる解説
今回は「試乗商談会」という意味合いもあり、参加者は一度ホテル内の広間に案内されました。
順番を待つ間は、コーヒーサービスなどの手厚いホスピタリティーを受け、終始フォーマルな雰囲気に。
そんな中、乗車前のブリーフィングを兼ねた商品説明が行われます。
案内役を務められたのは、MotoGP解説などでおなじみの元ホンダワークスライダーの宮城光さん。
各地で司会や講演会をされているだけあって、宮城さんのは解説は大変に聞きやすいものでした。
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- 「CBR1000RRをベースとするエンジンをもち、CBRよりもスイングアームを延長することで、その楽しさをさらに安定感をもって楽しめるようにした。」
- 「タンクからシートにかけてのラインを大胆にコンパクトにし、ハンドルをライダーに近い位置に設定したことで素晴らしい操作性を体感できる。」
- 「歴史あるCBのブランドイメージを受け継ぎながらも、軽量で親しみやすい全く新しいスポーツバイクになっている。」
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このようなお話でしたが、朗々とした宮城さんの解説を聞きながら、参加者の期待感はさらに高まってゆくのでした。
この後も宮城さんは、出発直前の取り扱い説明などもされ、筆者にもたいへん丁寧にご対応くださいました。
宮城さんの姿にライダーのジェントルさを学びつつ、エントランス前で待望のCB1000Rを預ります。
いよいよ試乗開始
ここからは、足つきやハンドル位置などのライディングポジション。
そしてエンジンや車体のフィーリングについてお伝えしていきます。
自由度のある楽なポジション
このところ、他社のやや腰高な車両の試乗が続いたので、かなり警戒しながらシートにまたがりました。
しかし、CB1000Rにはその警戒感は不要で、830mmというシート高はクラスの中でも標準的な物。
身長162センチ座高91cmという残念な体型の筆者でも、両足で親指の腹と中指の先ぐらいでマシンを支えることができます。
さらに、片足ならば足の指の付け根くらいまでしっかりと接地させることができるので、足元に特別な注意を払うことなく、安心して乗ることができました。
スタンドを払おうと、起こすマシンは実に軽く、乗車1Gで沈み込むサスペンションにも硬さは感じません。
この辺りからは既にハンドリングの自在さが予感できます。
ハンドルに手をかけてみると、位置は高すぎず、宮城さんの解説どおりライダーに近い位置にあります。
このおかげでアップライトな姿勢をとることもできます。
さらにその姿勢から、しっかりとニーグリップした下半身と腹筋に上体を預けていく。
すると、若干前傾した形で、速度に身構える体制を取ることもできるのです。
また400なみにコンパクトなタンクも手伝って、ハンドル幅もやや広めに感じました。
全体の軽さに加え、このハンドル幅も取り回しの軽さにかなり貢献しているように思います。
ライダーの気分や状況に合わせて自由に楽しめるポジション。
これは相当魅力的です。
マシンとの対話を楽しむ
さて、いよいよイグニッションキーを回し、エンジンを始動。
期待に胸が高鳴ります。
キルスイッチ一体型のスターターを押すと、メタルの質感たっぷりのサイレンサーから「ルォォォー」という低いアイドリング音が響き始めました。
感度を見るためにアクセルを軽くあおると、ヴワァォン!ヴワァォン!とやや甲高くも聞こえるレーシーなサウンド。
改めてそこに、その声の主がスーパースポーツバイクCBR1000RR譲りの物であることを思い、今まさにそれを自分が操ろうとしていることに興奮を覚えます。
モードで変わる「表情」を見る
スタンダードモード
反転液晶のメーターパネルはコンパクトにまとめられていて、スピードやギアポジションなど優先的に欲しい情報は確認しやすくなっています。
欲を言えばタコメーターに、もう少しばかりの大きさが欲しいと思うのですが、きっとそれは老眼のせいということにしておきましょう。
そこは慣れに任せることにして、走行モードをSTANDERD(スタンダード)にしてスタートします。
(※各モードのメーター写真はすべて、走行終了後に許可をいただいて停止状態で撮影したものです。)
このモードではトラクションコントローラーの介入度・パワーモード・エンジンブレーキともに強めの設定。
フケあがりも軽く、タコメーターは忙しそうに動いています。
ギアを1足に入れ、トルクの感触を確かめようと、アクセルを開けずに徐々にとクラッチをつなぐだけの「クラッチスタート」を試みます。
初速での押しの強さは期待するよりやや控えめ。
といってもすぐにエンストを喫するほどではなく、ゆっくりと繋げばしっかりとマシンを前に進めてくれます。
バイクは低速で走ったときこそ、操安性を試されるもの。
サスの動きもしなやかで、ギャップの通過にストレスはなく、速度を増すとしっかり感を感じます。
宮城さんのおっしゃる通り、このCB1000Rは巡航域はもちろん、そこから速度を落として停車するまで一貫した車体の安定感を確認できました。
自由なポジションと、ライダーの意思に対して過ぎることのないエンジンフィールは、港町横浜の風景を楽しむ余裕を与えてくれます。
お散歩ペースで快走すると、アイコニックライトがCB1000Rへの興味を引き付けるのか、交差点では周囲のライダーからの熱い視線を感じました。
先導付きで約20分の試乗コース。
マシンにもなじみ、試乗中盤に差し掛かったあたりから、各走行モードの表情を試します。
左側にあるSELの上下ボタンで、メーター上に現れるカーソルを動かし、ひとまずモードをSPORT(スポーツ)へ。
スポーツモード
ご覧のようにこのモードでは、トラクションコントローラーの介入は小さく、エンジンブレーキも弱め。
その代わりパワーモードは全開です。
アクセルを「クっ!と」開けてみる。
するとエンジンは右手の動きに鋭く呼応し、「ラッ!」と一気に駆け上がる加速感。
これがスタンダードより明らかに力強くなっています。
そのフケ上がりの軽さと小気味よさは字実に爽快。
あくまで、市街地を走る試乗会なので限界はありますが、それでもちょっとした刺激を楽しむことができました。
この2モードだけでもその「表情」の違いがはっきりしているのに驚き、エンジンの使い方に自由度があることを発見できました。
ユーザーモード
さらにモードを切り替えると、今度はUSER(ユーザー)という表示が現れました。
このモードでは、パワーモードやエンジンブレーキの強さ、さらにはトラクションコントロールまで、プリセットした好みの設定を呼び出すことができます。
さすがに限られた状況の中で、そこまで試すことはできませんでしたが、これはもう少し速度域の高い走行会にお邪魔する機会があればぜひ試したいところです。
レインモード
そして、モードをスタンダードに戻そうとする途中に、RAIN(レイン)の表示に切り替わりました。
パワーモードはかなり絞られ、トラクションコントローラーの介入が全開。
エンジンブレーキも強めな設定は、雨天や悪路での走行を想定したもの。
アクセルを開けると、今度は一変してアクセルの感度にゆとりがあり、タコメーターの動きも穏やかです。
それが示す通り、出足もかなりマイルドになりました。
雨天であれば、アクセルをグッと開けたときのトラクションコントロールを見たいところですが、今日は晴天。
この状況ではやはりマルチに楽しめる「スタンダード」が恋しくなりました。
ちなみにメーター右端にはLEDイージケーターがあります。
走行モードを喫り変えるとモードごとに違った色で発色し、ギアチェンジのタイミングを知らせるシフトインジケーターなどの機能も持っています。
走行中に見ていても、うるさく光るのではなく、ほんのりと柔らかくきれいな色で各モードの表情を伝えていました。
カタログにも写真で示されることがなかったので、これはちょっとよい発見でした。
しいて言うならばここは…
市街地で操作をしていくうえで若干気になったのが左のスイッチ類。
グリップヒーターのスイッチもあり、ファンクションの多機能さにしてはシンプルにまとまっています。
ただ、これまでのバイクのスイッチへの慣れから、操作の面で少々戸惑う点もありました。
例えば、トラクションコントローラーの設定は、これまでのバイクでいうとパッシングノブの位置にあります。
ではパッシングはどこかというと、
ライトのハイロー切り替えを行うディマーボタンのハイビーム側に集約されていました。
機能的と言えば機能的なのですが、オーナーになったら慣れておく必要があるでしょう。
また最近の傾向なのか、ウインカースイッチとホーンスイッチの位置関係が入れ替わっています。
ホーンスイッチもなぜかとても大きいので、交差点手前では何度かついついホーンを鳴らしてしまいました。
オーナーになったなら、それに違和感を感じなくなることかもしれません。
しかし操作頻度を思えば、ここは従来の位置関係がうれしいところではないでしょうか。
これは以前CB1100EXやCB1300SBにも試乗させていただきましたが、やはり同様の感想を持ちました。
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他車との比較をザックリと
これまでモーターサイクルナビゲーターでは、ヤマハのMT-10/SP、そしてカワサキのZ900RSなどについても試乗してきました。
ここ数年で各社とも個性豊かになったハイパーネイキットたち。
それぞれ試乗させていただいた筆者の印象をもとに、新しく加わったCB1000Rのキャラクターを比較したいと思います。
CBとZは「夢」と「魂」
昭和の日本だからこそ生まれた2台の直列4気筒の大型バイク。
CBとZは互いに切磋琢磨しながらメイドインジャパンの素晴らしさを世界に広めた素晴らしいライバル同士です。
ご承知のようにZ900RSは初代の雰囲気を現代に醸し出す「ネオレトロ」マシン。
しかしその中身は、電子制御など最新のギミックを積極的取り入れたハイパーネイキットです。
例えば、ラジアルマウントキャリパーを擁する倒立サスや、
あえて採用されたモノサスやSSバイクを思わせる車体構成。
そして電子デバイスのスイッチやメーター表示など。
そこから予感する通り、Z900RSの走りは「レトロ」という言葉をのノスタルジーを見事に裏切るもの。
剛くしなやかな動きにその「魂」が感じられます。
関連記事;『Kawasaki Z900RSは「再来」のレッテルに甘んじない』
その点、CB1000Rは伝統あるCBの血統にありながら、過去を踏襲する外観を持たず、カフェスタイルで斬新性を前面に出した新世代のバイクとして生み出されました。
Zよりも見た目の重量感を感じさせないコンパクトなボディーに、CBR1000RRを元にしたハイパフォーマンスエンジン。
それを着なりのジャケットのようにパッと楽しめるCB1000Rのスマートな乗り味に「夢の翼」としての自由を感じました。
「夢」と「魂」という誕生以来の2つのプライド。
2台を乗り比べても各々がちゃんとその部分をブレずに持っているのが面白いところです。
造形の趣を異なる二台ですが、先述の「ユーザーモード」で自分好みの設定ができる部分が、Z900RSより大きな自由を感じるところだと思います。
(※Z900RSはプリセットされた2モードのトラクションコントロールになっていますが装着されています。)
CB1000RとMT-10/SP
CB1000Rは、ハイパフォーマンスなCBR1000RRの乗り味を、もっと気負わずに安定した形で楽しめるようにしたバイク。
宮城光さんの解説を今一度思い出すと、そういうことになります。
となると、クロスプレーンエンジンをはじめ、フレームなどの大部分をR1と共通のものとしているヤマハのMT-10やMT-10SPは、比較対象としては面白いところでしょう。
MT-10/SPの場合はデザイン上、トランスフォーマーのようにパーツの集合体が一つの形を作っていくイメージで造られています。
実は筆者も最初はかなりとっつきにくいイメージを持っていましたが、試乗させていただいたときにこのデザインの理由がわかりました。
CB1000Rも先述のように、電子制御によって多彩な性格があるのですが、MT-10の場合は各モードのキャラクターがかなり際立っていて、各々はっきり違います。
特にMT-10SPについてはそのモード設定がサスの味付けにも及び、まるで何台かのバイクのキャラクターが1台の中に、まさにトランスフォームしているのです。
クロスプレーンエンジンが奏でるGPサウンドをアップライトな姿勢で聞きながら「悦」に浸る。
この感覚もまた不思議なものでした。
関連記事;『【試乗レポート】Yamaha ヤマハ MT-10 SP 電子制御が面白い!』
後に諸元を比較しますが、シート高はMT-10の方が5mm低く、ハンドル位置もより近いため、ライディlングポジションもCB1000Rよりアップライトな印象です。
重量も2㎏軽いことになっているにもかかわらず(MT-10SPでは同じ212㎏)、引き起こした時の軽さはCBR1000Rの方が軽く感じました。
さらにMT-10はメインフレームがR1と共通であるため、ハンドル切れ角がCB1000Rよりも少ない印象です。
やはり、CB1000Rの外見的なスマートさは馴染みやすく、それは取り回しのしやすさにも表れているように思いました。
ライバル車との諸元比較
CB1000R | MT-10/SP | Z900RS | |
全長/全幅 /全高(mm) |
2,120/790 /1,090 |
2,095/800 / 1,110 |
2,100/865 /1,150 |
軸距 | 1,455mm | 1,400mm | 1,470mm |
キャスター /トレール |
25゜00 ′/100mm |
24°00′ /102mm |
25°00’ /98mm |
最低地上高 | 138mm | 130mm | 130mm |
シート高 | 830mm | 825mm | 800mm |
車両重量 | 212 | 210kg 〈SP:212kg〉 |
215kg |
総排気量 | 998㏄ | 997cc | 948cc |
内径×行程(mm) /圧縮比 |
75.0×56.5 /11.6 |
79.0×50.9 /12.0:1 |
73.4×56.0 /10.8:1 |
最高出力 kW[PS]/rpm) | 107[145] /10,500 |
118[160] /11,500 |
82[111] /8,500 |
最高トルク (N・m [kgf・m]/rpm) |
104[10.6] /8,250 |
111[11.3] /9,000 |
98[10.0] /6,500 |
燃料タンク 容量 |
16L | 17L | 17L |
レギュラーガソリン指定 | 両車ハイオク指定 | ||
タイヤ サイズ |
120/70ZR17M/C(58W) | ||
190/55ZR17M/C(75W) | 180/55 ZR17M/C(73W) |
まとめ
例えばコーヒーのブルーマウンテンは甘味・酸味・香り・コク・苦味のすべてが絶妙なバランスで整い、繊細なテイストを生み出すことで知られています。
カフェレーサーの「カフェ」とは本来バイク自体をコーヒーに例える言葉ではありません。
しかし、CB1000Rを淹れたてのコーヒーに例えるならばきっと、すべてをバランスよく楽しめるブルーマウンテンの味なのかもしれません。
「ネオスポーツカフェ」という新たな価値観を創造するCB1000R。
気になった方は是非一度、新装されたお近くのホンダドリーム店の試乗車で賞味ください。
記事協力
株式会社 ホンダドリーム東京 代表取締役 酒匂 好規 様
ホンダドリーム相模原 店 長 川島 充 様
ホンダドリーム横浜旭 店長主事 秋山 雅和 様
Special Thanks 宮 城 光 様