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解決できるか?レース前の課題
春を告げると言えば、何といってもmotoGPのテスト開始の話題が我々ライダーにとって一番春を感じるところですよね。
既に課題満載だった公式練習も終わり、いよいよ3月18日カタールでのシーズンの開幕を待つばかりとなりました。
シーズンインを前に行われる公式テストは3回。
それ以前はレギュラーライダーによるテストは認められていないだけに年明け3か月は、各チームとも海を渡りながら山積する課題の解決に向けて大わらわ。
1月末から2月初めにまずマレーシアのセパンサーキットで昨シーズンの懸案事項の確認と対応策が試されます。
そして2月中旬には、今季から初めてレースカレンダーに加えられたタイのチャーン・インターナショナル・サーキットで、セパンでの課題をさらに煮詰めていきます。
そして3月初旬に、カタールのロサイルサーキットで開幕戦を控えた大詰めの調整が行われるといった具合ですね。
レースは本戦だけじゃない
いずれのチームにとってもこの3回のテストは、今季全19戦の方向性を探る重要なテストになるわけです。
昨シーズンをっ振り返ると、ホンダの好調を脅かさんとするドゥカティが勢いを見せ、ヤマハはマシンのセッティングの混迷から抜け出せないままのシーズンオフ。
参戦後発勢の中では、スズキが好調であったものの、KTM・アプリリアの2メーカーは後塵を突き破れずにいました。
シーズン後半には好不調の「コントラスト」はだいぶはっきりしていましたね。
これら3回のテストを経て、不調を抱えるメーカー・ライダーがいかに自らの課題を解決し、好調の糸口を探るかというのが大きな見どころだと思います。
つまり本線を前に、チームの必死なレースは既に始まっているとも言えます。
テストを終えた各メーカー
セパン⇒タイ⇒カタール。
ここまでの各メーカーの様子を大まかにまとめてみようと思います。
ホンダ
ここまでにホンダは多岐にわたるテスト項目を細密なスケジュールをもってこなし、マシン各部の感触を細かくテストしていた模様。
今季RC213Vは、タイテストで「新たな領域」と言わしめたカーボンスイングアームを採用。
エンジンは昨シーズン終了直後から開発が続けられてきた新型を採用し、それらを新エアロカウルに包み込みます。
関連記事;「Moto GPレプソルホンダもついにハンマーヘッドカウル投入!」
テストではエンジンがピーキーで少々粗削りだという課題があったようですが、これはエレクトロニクスで十分に補正が可能な範囲ということです。
マシンのパッケージングの方向性が定まり、マルケス・ペドロサに加えクラッチロウもホンダライダーはシーズンインを前向きな気持ちで迎えようとしています。
DUCATI
昨シーズン、筆者も土砂ぶりのもてぎで見たドビチオーゾの走りに圧倒されました。
しかし、ロレンソの活躍は彼のキャリアの中で決して良いと言えるものではありませんでしたね。
セパンでは3日目に15ラップ平均タイムでトップをマークしたロレンソでしたが、タイテストでは22番手と低調に終わりました。
対してドビチオーゾは同日7番手。
マシンのリズムに好感触を得たとして前向きなコメントを寄せたのは、ロレンソとは対照的なところです。
ヤマハ歴の長いライダーがドゥカティに乗るというのは、かつてのロッシもそうでしたが、馴染むのに相当時間がかかると思うのは気のせいでしょうか。
今季のディスモセディチGP18は、ちょっといかつくも見える新型のエアロが注目を浴びるところです。
コーナー進入のフィーリングを改善したというアルミフレーム+カーボンフロントフォークも壮観。
しかし、いまだ細部のパッケージングにロレンソは悩まされているようです。
ヤマハ
昨シーズンは序盤に好調と思われつつ、タイトル争いに絡むことができなかったヤマハ。
ロッシとピニャーレス、そしてサテライトチームのザルコもマシンのセッティングにはかなり苦しめられ続けています。
彼らを苦しめる原因がいかに改善されるかは、今期の大きな見どころの一つ。
YZR-M1が抱える問題はなかなか興味深いところなので後程解説することにします。
エアロについては方向性が見いだせたようですがエレクトロニクスとフレームのマッチングが得られず、セパン・タイでは走っては課題を抱えを繰り返した模様。
タイテストを終えた後でメーカーは改善点が見えたとしていますが、3人のライダーからは前向きなコメントが得られなかったと言います。
しかしさすがにカタールではそれぞれのライダーが課題をまとめた様子。
ロッシに転倒があったものの、最終的にザルコ・ロッシの順で1・2フィニッシュを決めています。
決して満足ということではないようですが、納得できる状態で開幕戦を迎えられそうだと、ヤマハライダーからようやく明るいコメントが聞くことができました。
この調子で開幕からいいスタートを切ってもらいたいものです。
スズキ
2016年は三年2年目にして初の表彰台を獲得したGSXR-RR。
しかしレギュレーションによって、この一勝のために2017年シーズンではエンジン開発凍結と、年間7基というエンジン使用基数制限を受けてしまいます。
トラクションでコーナーを詰めるようにマシンに工夫しながらしのいだ昨シーズン。
今季はその制限からようやく抜け出すことができ、テストでは昨シーズンから蓄積されたデーターが存分に活かせると、チームの雰囲気も上々なようです。
ライダーのイアンノーネとリンスはテストで各部を試し、特にエアロがフロントのトラクションに効果があると、ともに好印象を得た模様。
マシンとのマッチングもよく、二人ともテストの結果に満足していたようです。
カタールでは残念ながらイアンノーネが体調不良でテストには不参加。
しかし、リンスが14週のロングランを行い、7番手のタイムを記録するなど好調で、チームも後に活かせる結果を得たようです。
KTM・aprilia
いわゆる参戦後発組のKTMとaprilia 。
既に経験豊富なはずのヤマハがセッティングに並々ならぬ苦戦を強いられている状況はお伝えしたところです。
この2チームにとっても今のレギュレーションの中で各部のパッケージングを煮詰めていくのは難題。
アプリリアのライダーであるアレイシ・エスパロガロはフレームの強力さを評価するも、エンジンの非力さに苛立ちを隠せない様子です。
セカンドライダーのスコット・レディングも、レイトブレーキで勝負するしかない状況に「あり得ない」とぼやいています。
こうした課題に対するメーカーのマシン対応が遅いという不満もあるようで、ライダーの腕頼みでどこまでいけるのか心配なところ。
最後のカタールではアレイシが順位中盤となる14位、レディングは20位でテストを終えています。
そして、参戦2年目のKTMはGPクラスでのデーターを収集している段階らしく、一戦ごとに感触を確かめていく方針のよう。
ライダーのポル・エスパロガロはチームの状況について、「混乱している」としながら「レースごとに改善がなされていくだろう」と、消極的なコメントをしています。
なお、ポルエスパロガロはタイで転倒して頚椎を損傷。
そのわずか2週間後のカタールテストに参加しました。
しかしやはり、負傷個所の違和感が激しく、完全なテストはできず23人中19番手のタイムでテストを終えています。
ただ、どんな状況でも結果を残そうとするプロライダーの精神に拍手を送りたいですね。
ちなみにカタールテストリザルトはこちらです。
複雑さを極めるマシン開発
レギュレーションのあり方、マシンとライダーの相性、チームの方針。
そうした様々な人やモノの相性はレースの好不調を形作っています。
特にヤマハは、昨シーズンからセッティングに悩んでいるわけですが、どうやら解決点を見出していく作業には尋常ではない複雑さがあるようです。
2016年シーズンから電子制御のハード面が各チーム共通のものになり、2017年シーズンではソフトの面も共有化が図られました。
これがヤマハが昨シーズンから直面している混迷の原因。
今どき市販マシンにもバイクの動きを管理しながらライダーをサポートしてくれる姿勢制御装置(IMU)が搭載されていていますよね。
当然これがYZR-M1にも搭載されているわけですが、これが他社と共通なわけです。
ですからこの制御装置のデータありきで車体を変えながらバイクの動きを調整していくことが必要になったのです。
ステムの角度やエンジンの搭載位置を微妙に変えたり、様々なノウハウを駆使していくわけですね。
加えてここにミシュランのタイヤとのマッチングという問題もあり、ライダーは相当な数の組み合わせを試さなければなりません。
もっと言えばさらに「ライダーの好みや乗り方」という問題もかかわってきます。
ヤマハでは3人のライダーがおよそ共通した課題を指摘しているわけですが、ドゥカティではライダーの方向性が分かれていたり…。
とにかく独自のシステムで戦えた時代以上に、一筋縄ではいかなくなったマシン開発の問題は、開幕後もしばらく尾を引く模様。
恐らく開発コストを抑えて、後発メーカーの活躍を促すための方策なのでしょうが、今の後発メーカーの混迷ぶりを見る限り、この電子制御の共有化にレースを面白くするメリットがあるのか?
あくまで筆者の個人的見解ですが、かなり疑問に思っています。
V・ロッシ今季限り?
昨シーズン終盤から聞こえ始めていたロッシ引退説。
レース現役年齢としては高齢な39歳となり、40歳以降は現役を退いて自らのチームを立ち上げ、その監督に就任するという噂がありました。
現在ヤマハのサテライトチームであるテック3が、今季限りでヤマハとのパートナーシップを終了させ、来季2019年からKTMのマシンで戦うことを既に発表しています。
テック3に与えられていた、「サテライトのYZR-M1の供給枠をロッシが受け継ぐ」というプランがあったとかなかったとか?
こんな風に状況的として「自然」なシナリオもできていたわけですが、ここへきてどうやらそれは早々に実現しないのが確定したようです。
ロッシは既にMoto3チームVR/46 SKYのチームオーナー。
海外メディアにこのチームは「チームとしてGPクラスに参戦するプランはまるで白紙の状態だ」とコメントしています。
さらにロッシ自身もカタールテスト後のメディアの取材に対し、
「確かに自分の引退後についていろいろと話し合ったりもしているけれど、たぶんそれは2019年や2020年の話ではない。
恐らくあと2年は現役でいると思うし、その間新たにヤマハとmotoGPのチームを作ったりはしない」とコメントしています。
既にロッシはヤマハと2019年2020年の契約にもサインしたと言いますから、今後は中年の星としても応援していきたいですね。
応援しよう!中上貴晶
そして何より今季は、中上貴晶選手のGPクラス昇格。
関連記事;「雨にも負けずもてぎ決勝を観戦!がんばれ中上貴晶世界一の舞台へ」
IDEMIITSU HONDA Team Asiaの出光カラーでいよいよ最上の舞台に上がります。
我々日本人にとって注目すべきところでしょう。
ご存知の方も多いと思いますが、Moto2とMotoGPとでは、レギュレーションに大きな違いがあります。
Moto2は主催者側に厳しく管理された600㏄の全車共通エンジン。
方やMotoGPはサテライトと言えど開発マシン。
その上Moto2にはない、スペアマシンも使ってのセッティング。
雑誌の取材の中で中上選手はこの辺の順応に若干の戸惑いがあったと話しています。
しかしそこはさすがの中上選手。
セパンではルーキー勢一番時計をマークするなど、既に好調な滑り出しを見せてくれました。
タイでもその勢いは変わらず、堂々の総合順位8位とトップ10入り。
しかしカタールでは惜しくも転倒。
総合21位でテストを終えました。
着々と歩んできて勝ち取ったGPマシンのシート。
ぜひともトップに絡み続けてほしいものです。
これは目が離せませんね。
アジアンライダーの活躍に期待!
今季はサテライトチームのテック3に初のマレーシア出身のライダー、ハフィス・シャーリンがフル参戦。
実は彼の活躍は、YZF-R25を含むこのクラスの発展、そればかりではなくアジア地域の発展にも深くかかわっています。
というのも、(日本仕様のCBR250RRを除いて)250㏄スポーツの原産国はマレーシアやインドネシアそしてタイなどのアジア地域。
この地域で250㏄スポーツを生産する目的は単にコスト削減ということだけではありません。
この地域の技術の発展に大きく貢献するべく、メーカーはこのクラスで戦うレースカテゴリーを創設。
アジアのチームは「いつかは自分たちもMotoGPに!」とライダーもメカニックも非常に士気が高まっていると言います。
そうた中て今期は初めてタイでGPが行われ、アジア選手権から初のGPクラス昇格ライダーとしてハフィス選手の活躍が期待されているのです。
ハフィス選手自身もヤマハの公式ページに「このチャンスに感謝し、自分にできることはすべて全力でやり抜く」と強いモチベーションを表明。
日本にとって実に縁の深い地域の発展。
そしてハフィス選手の活躍に期待したいですね。
関連記事;「アジアのレーシングライダーを育てるということ。」
2018motoGP開催日程
現在発表されている2018年MotoGPのレーススケジュールは以下の通り。
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第1戦
3月18日 カタールGP 第2戦
4月8日
アルゼンチンGP 第3戦 4月22日
アメリカズGP 第4戦 5月6日
スペインGP 第5戦 5月20日
フランスGP 第6戦 6月3日
イタリアGP 第7戦 6月17日
カタルニアGP 第8戦 7月1日
オランダGP 第9戦 7月15日
ドイツGP 第10戦 8月5日
チェコGP 第11戦 8月12日
オーストリアGP 第12戦 8月26日
イギリスGP 第13戦 9月9日
サンマリノGP 第14戦 9月23日
アラゴンGP 第15戦 10月7日
タイGP 第16戦 10月21日
日本GP 第17戦 10月28日
オーストラリアGP 第18戦 11月4日
マレーシアGP 第19戦 11月18日
バレンシアGP - また、日テレG+が今年も全戦放映予定。
- 放映日程など詳しくはこちらです。
- 各戦の熱い戦いを期待しましょう!!
参考文献;RIDIND SPORTS 4月号
Crash.net3月2日版
他、各メーカー公式HPより、MotoGP関連記事を参照