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やっぱり出るって、MTW-09
かねてから噂されるヤマハの大型3輪バイク。
筆者は信頼できる関係筋から、東京モーターショー2017でヤマハから3輪の大型バイクを出展するのが「噂」ではないという話を聞きました。
どうやらフォルムはティーザー(先行)映像などで既に多くの人が目にしたものに近いようで、MWTという名が表す通りMT-09をベースとしたものになる見込みです。
MTの間に入った「W」の文字。
これはヤマハが「転ばないバイク」として提案するLMW(リーニンングマルチホイールズ)という機構の一文字を取ったものと考えて間違いはないでしょう。
筆者は先日愛知県で行われたメーカー主催の「MTシリーズ体験試乗会」を取材。
XSR700のバーチャルインプレもこの取材をもとにしたものでした。
流石にこのMWTまでは試乗や展示はなかったわけですが、筆者はココで興味深い発見をしました。
この試乗会では、MT-25~MT-10SPに至る国内向け全モデルが試乗の対象。
更に会場内ではヤマハ製スクーターの試乗キャラバンということで、マジェスティーS、そしてこの3輪LMW機構を擁するトリシティーにも試乗することができました。
はい、勘のいい方なら筆者が何を書こうとしているのか、もうお分かりですね。
そうです。
頭の中でMT-09とトリシティーの乗り味から、MWT-09の乗り味をモンタージュしようというわけです。
LMWはやっぱりスゴかった
今回筆者が乗せていただいたのはMT-09とトリシティー155。
まずはトリシティーが持つLMW機構がライダーにどういう印象をもたらすのか。
これについてインプレッションをお話ししたいと思います。
丁度この写真の奥にマジェスティーS(155㏄)が映り込んでますが、スクーターキャラバンのコースではこの2台を比較試乗しました。
最初に乗ったのがトリシティー155。
筆者はLMW初体験です。
ご承知の方も多いのですが、念のため。
トリシティーは3輪ですが、左右の動きがフリーなので、センタースタンドとサイドスタンドがついています。(支えないと倒れます)
3輪構造を持つスクーターとしては欧州車で前3輪も既にありますが、自立可能なそれらとこのLMW機構は様々な点が大きく違います。
基本構造としてLMWの場合は、ステムを軸に左右を繋ぐ2本のアームが自在接手のような形で、一本のホイールにつき2本(左右計4本)のサスペンションと連結され、これらが(前から見たときに)平行四辺形を描くように可動するのが特長です。
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ヤマハのカタログ映像では、前輪を段差に乗り上げ、左右の高さをけても車体が左右方向の水平を保つことが解り易く書かれています。
この機構が最も得意とするのは、2輪では得られないほどの安定操舵を可能としているところです。
一般的な2輪車の場合、例えば歩道の縁石をまたぐようなスチュエーションでは速度を十分に落とし、大きな進入角度をもって進入する必要がありますよね。
このとき2輪では不安定になり易いので、一瞬神経を使うと思います。
これをLMW機構を持ったバイクで進入すると、段差の存在をあまり意識することなくすんなりと曲がっていけるんです。
段差で特に威力を発揮するLMW。
試乗コースがフラットだったので、試乗をする方からは「俺も段差乗り越えたかったなぁ」という声も聞かれました。
しかし、このLMWの真価は段差だけにとどまらないことを筆者は見逃しませんでした。
遅ればせながら言うと、この「LMW」とはこのL(リーンをしながら)M(マルチ可動する)W(ホイールたち)ということ。
この日のテストコースは、アスファルト上に時折砂利が浮いているところがあり滑りやすい、いわゆる低ミュー路。
一般的なスクーターの場合は動力機構が後ろよりで、バイクよりもフロントに加重がかかりにくいといため、こうした路面での旋回は非常に苦手であるといってよいでしょう。
しかし、LMWの機構では左右の前輪が自在に動くことによって、旋回時は内足も絶妙な角度でリーン(傾き)させながら、外脚が踏ん張った形でリーンします。
それがちょうどこの写真、解り易くないですか?
ここも結構滑りやすいんですが、いいスピード・いいバンクで躊躇なくコーナーに進入しているのがお分かりになると思います。
筆者はここで、ハードブレーキングとアクセルを開けながらの立ち上がりも試みました。
更にパイロンの間を使ってスラローム走行もさせていただいています。
いずれの場面でも、車体の重さや荷重がうまく左右に分配されて安定し、LMW機構が車重をほとんど感じさせません。
実はトリシティーに乗る前は「自重が重い」という雑誌の記事を読みかじっていたので、これほどまでの運動性は予想外でした。
マジェスティーSの車両重量はカタログ値145㎏。
トリシティー155の車両重量カタログ値165㎏と20㎏もの増量です。
この後、比較のために写真に写り込んでいた赤いマジェスティーSで全く同じことが…
怖くて全然できないんです。
マジェスティーSの名誉のために言っておきますが、このコースは力をかけて曲がっていけるような路面ではありません。
でも路面の性質上トリシティーと同じように走ろうとすると、ピッチングを利用しても砂利に乗って前輪が持っていかれそうな感覚が強く、コーナー手前では充分な減速が必要でした。
つまりLMWは路面の状態を2輪ほど気にせずに、思った通りのラインを非常に楽な形で走れてしまう?いや、走ることができるということになります。
ヤマハ党の女子高生が出てくる「あのマンガ」で、彼女がTZRの後方排気の加速を初体験して言った誉め言葉。
限界が高いことをライダーに気づかせないこのトリシティーLMWを、筆者は同じ言葉で誉めてあげようと思います。
「これは…実に、怪しからんバイクだ」(ニヤリ)
MWT-09を占う上でのMT-09
さて、前章までの事はちょっと記憶にとどめていただくこととして、MWT-09のベースといわれているMT-09について印象をザックリお話ししていきましょう。
この試乗会では、「お一人様3台」という制限があったので、実はこの場で現行型のMT-09には乗ることはできませんでした。
ただ先代MT-09で市街地での試乗経験があるので、この印象からいろいろとアイコラというか、脳内モンタージュを開始です。
エンジンはクロスプレーンクランクを持った「CP3」と呼ばれるDOHC3気筒を搭載。
クロスプレーンエンジンはYZF-R1の「CP4」(4気筒)とMT-07の「CP2」(2気筒)で展開されるシリーズです。
いずれも慣性振動が極めて少なくなるように設計されているのが特長。
これによって3つのエンジン共、シルクのように「つるっ」とした滑らかな回し心地が与えられています。
それでいながらにして、トラクションもバッチリでグイっと車体を押し出すパンチもあります。
ただそれが乱暴な感じでも軟弱でもなく、アクセルで魔法をかけているかのように従順にパワーをコントロールできる。
クロスプレーンエンジンシリーズには、そんなキャラクターが各々に与えられているんです。
特にこのMT-09の「CP3」はとてもシリーズの中でもかなり元気なキャラクター。
車体はアップハンドルでツーリングイメージ。
軽さと従順さを兼ねそろえ、いたずら心をちょっと強くすれば、フロントをポンポン上げながら加速する。
上質なうちにワイルドさを秘めた面白いキャラクターです。
あくまでこれは初期型MT-09での感想ですが、現行型は電子制御の設定が見直され、3モードに切り替えられる各モードのキャラクターが、よりはっきりしていると言います。
また顔つきもよりシャープでワイルドに。
乗る人が望めば、ちょっとやんちゃなバイクにだってなるのかもしれませんね。
MT-09、跨った感じはちょっと腰高感を感じます。(筆者身長162㎝)
最近のバイクですから、あえてライダーを高い位置に座らせて、高い重心位置を使ってハンドリングをクイックにする。
スーパースポーツに多く用いられている方法を踏襲しながら、アップハンドルで元気キャラを楽に扱えるようにしているのが面白いところです。
MWT-09をモンタージュしてみる
で、そんなMT-09にLMWがドッキングです。
初代よりさらに磨きがかかった運動性能に、実は限界値の高いLMW機構。
フロントサスが4本になって全幅が増していることから、外観としてはやはり重たそうな印象を受けるのは否めません。
はい、ココからトリシティーの話を思い出してください。
実は現行MT-09のカタログ上の車重は193㎏もあります。
実際はMTの状態でも意外に重さがあるのに、重量配分の良さと腰高ディメンションが幸いして乗った感じがとても軽く感じるから不思議です。
マジェスティーS⇒トリシティー155の20㎏増からスケール的に想像すると、様々な軽量化をしてMWT-09では35㎏増の248㎏ぐらいにはなっているでしょうか?
しかしトリシティーの例から言って、恐らく重量が分散され、走らせているライダーにはほとんどその差を感じさせない、むしろMTよりも楽な乗り味になるはずです。
それでいて、大きめに見える外観の印象を裏切るようにひらひらとコーナーを切り返し、MTよりも高いアベレージ保ちながら突き進む。
路面のコンディションが悪くても、2輪より一つ多いタイヤの接地面をABSで押さえることができるわけです。
元からシャープな感じでも使えるMT-09。
そのコーナリングが、安定した形でより一層際立った形で楽しめる「異次元のスポーツマシン」というのが、MWT-09のモンタージュイメージです。
Ride The Revolution、伊達じゃないねヤマハさん!